中学生幸村×大人桜乃





最近私の部屋に勝手に上がり込む男の子がいる。何でもないような顔で「おかえりなさい」って笑うの。ほら、今日も。

「おかえりなさい、お姉さん」
「…幸村君、人の部屋に勝手には言っちゃいけないって学校で習わなかった?」
「習ってないね」
「なら一般常識…はぁ、」

もういいです、この会話何度繰り返しただろう。彼は幸村精市という、中学三年生。テニスが趣味(趣味というよりもはやプロの域に達しているらしい)のモテモテ男子。モテモテという言葉が既に死語なのかもしれない。そんなことを気にする自分は、大学を卒業して少しが経った。
どこからどうみても姉と弟に見えるであろうこの光景は。しかし彼の言葉でそれはいとも簡単にぶち壊される。

「ねぇ、今日こそ。返事」

鞄を置いてソファへと腰かけた途端、後ろからするりと手が伸びてきて、抱きしめられる。息が詰まった。なんて恐ろしい事だろう、中三の少年に告白されるだなんて。私が同じ中学生だったら喜んでオーケーするであろうけれど、今この姿で彼とデートできるか?と聞かれたら正直無理だと。歳離れすぎ。

「無理だよ」
「どうして?」
「何度も言ったでしょう?」
「愛に歳の差は関係ないよ」
「かっこいい事言わなくていいから、離して」
「やだよ、どうして離さなきゃいけないの?返事まだもらってないのに、お姉さんはいっつもはぐらかしてばっかりだ」
「返事したじゃない、無理って」
「俺にとっての返事はオーケーしかないから」

うわ、なんて自分勝手な。もういっそここで適当に返事してしまえばいいのだろうか。そのうちに適当に別れを告げてしまえばいいのだろうか。ああ駄目だ、負ける。自分の中での葛藤に苦戦していると、いつのまにか彼は私の背後から目の前へと移動していて、私をじっと見つめながら、私の手をとった。さらさらした細くて長い指をするりと絡ませてくる感覚に手汗が滲む。恥ずかしくなって離そうとしても、その倍の力を込められて不可能だった。

「お姉さん、方向音痴でしょ?だから俺が一緒にいてあげるよ」
「何言って…」
「あ、あとお姉さん処女だから、俺が奪ってあげるからね」


なんてことを。思わず顔が引きつった。もう駄目、この男の子怖い。

「馬鹿なこと言ってないで、家帰った方がいいよ」
「また子供扱いする」
「子供だよ、全然子供」
「子供じゃないよ、だって」

瞬間、口を塞がれた。

「こういうこともできるんだから」
「…っそういうとこが子供なの!」
「お姉さん顔真っ赤だよ、あんまこういうの慣れてないの?大人のくせに」
「っ」

無邪気な顔して悪魔のようにくすくすと笑う、私は言葉が出てこなかった。大人のくせにと馬鹿にされた事にも怒りはあったけれど、なにより自分の顔をが現在進行形で赤くなっている事が言われなくてもわかっていて、悔しくて、惹かれていたことに気付かないフリをしていたのに。


「桜乃お姉さんは俺の事好きだもんね、だから、俺に色々と教えてよ」


ああ、なんて、恐ろしい子供。
ロストチルドレン



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