金桜←白







今思うとあの時に何故先に言ってしまわなかったのか、不思議だった。初めて彼女と出会ったのは、金ちゃんを探しに行ったときのことだったというのは、よく覚えている。思えばあの時から俺は彼女の事を好いていたのだろう。あの時はすぐに別れてしまって何も話せなかったが、俺の脳内から彼女の戸惑い顔が消えることはなかった。


その後、まさか金ちゃんと彼女が付き合うことになるなんて思いもしなかった。金ちゃんは眩しい太陽のように笑って"いつでも竜崎のおむすび食えんねんで!"と幸せそうにそう言った。俺はよかったなぁ、と金ちゃんの頭を撫でる。だが内心は苦しかった。取られたように感じて、別に彼女は自分のものではないというのに不思議なものだ。嗚呼、うまく笑えないとはこの事をいうのか。鉢から飛び出してしまった金魚のように上手く息が吸えなかったのだ。


次に彼女に会ったとき、彼女は俺に笑いかけた。いつも遠山くんが白石さんのこと、たくさん話してくれるんですよ。そう言って微笑む彼女は花のようで。ああ、金ちゃんは太陽で、桜乃ちゃんは花。なんとお似合いではないか、俺は歪に笑った。ああ、今思うと不思議なことだらけだ。何故俺はその時彼女を押し倒したのか。強く身体をぶつけた彼女の潤んで揺らぐ瞳に映る自分の顔はあまりにも滑稽だった。なあ金ちゃん。頭の中で問いかけながら俺は彼女にキスをした。なあ金ちゃん、君らは。


それからはもう大した記憶は無い。ただ一つ覚えているのは、やめて、やめてと泣きわめく彼女の悲鳴だった。それだけは俺の体中を波紋のように広がって、侵食してしまっているようだ。どんなに頭を切り替えようとも、BGMのように流れ出す。しかしそんなことより俺は、金ちゃんは怒るだろうか、とそっちを心配していた。が特にその後彼に殴られたこともなかった。恐らく彼女が何も話していないのだろう、そりゃそうだ。言えるはずが無いだろう。ああ、ずたずたになった彼女に今度は好きやで、そう言ってやろう。壊れてしまえばいい、何もかも、太陽を隠して、雨を降らして、花なんて枯れて腐ってしまえばいい。俺は最低だ。
ゴーストフラワー



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -