ガタンゴトン、ガタンゴトン、不規則な揺れとそれに伴う音をたてながら汽車は見知らぬ夜道を走る。先頭の車両から遠く汽笛が鳴る音が聞こえた。窓際に肘をついて、小さな明かりすら無く何も見えない外をただ眺める少年は、視線を向かい側に座る少女へと移動させる。

「寝ていいんだぞ」
「いいえ、もう少しだけ、柳さんの誕生日をお祝いしてからにします」

あと三十分程で自分の誕生日だった。それだけは祝うんだと意気込み、眠気を必死にかき消そうとするように目を擦る彼女に微かに笑みがこぼれる。別に何も時間丁度に言わなくても俺は十分喜ぶが?冗談半分でそう尋ねると、彼女はそれじゃあ意味ないんです、と意地になったように言った。

意地になったのはよかったがそれで体力を使い果たしたようだ。うとうとと、微睡みに引き込まれては頭を振ってそれから逃れようとしていたが、最終的には勝てなかったようだ。始めからこうなることは分かっていたが、俺はそんな彼女の様子を眺めて幸福感に浸り、再び外を眺めた。今度は小さな光が見える。彼女が起きてしまわないように音を出来るだけ控えながら窓を少しだけ開いた。

「やなぎさん…たんじょうび、おめでとうございます…」

起こしてしまったのか、驚きと申し訳ない思いでそちらを向くと、彼女は先程と同じようにもたれ掛かりながら静かな寝息をたてていて、俺は呆気にとられた。夢の中でも祝ってくれているのか、なんだか俺は可笑しくなって笑ってしまった。長く今はほどかれている髪を静かに持ち上げ、口付けを落とす。お前が目覚めたら伝えたいことが沢山あるんだ。窓から入る風が彼女の髪をそっと揺らした。
夜汽車



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