部長に"竜崎の様子が見当たらねえ、探して来い。"と言われたのでとりあえず探すことになった。失礼ながらに彼女は相当の方向音痴で、何処に居てもおかしくない。不安を感じながらひとまず彼女のクラスへ向かう。がらりと扉を開く。ああ運が良かった。夕焼けのオレンジに照らされて眩しい机達の中に一つ、覆うようにうつ伏せて眠っている少女が一名。出来るだけ足音に気を付けながら近付くと腕の下には日誌が開かれたままで放置されていた。これを書いている途中に眠ってしまったのだろう。いつも自分たちが振り回しているから、疲れさせてしまったのかなあ。心の中で静かに猛省した。前の席の椅子を借りて跨るように座る。起こす事も出来ずにとりあえずじっと見つめていると、彼女の身体がもぞりと小さく動いた。

体中の脈がドキドキと刺々しく鼓動する。ああ困った、色々と焦る。

「君の事、今起こしちゃったら…」

他の部員の所へ走って行っちゃうんだろうなあ。なんだか悔しくて、垂れ落ちている彼女の長い髪をそっと持ち上げた。手の平に触れる毛先がさらさらとしていて気持ちいい。

「君といると変な事ばかり考えちゃうよ」

もうほとんど聞こえない口パクレベルで呟いたはずなのに、彼女の頭がガバッと持ちあがる。心臓が止まるかと思った。

「あ、私、寝ちゃって…お、鳳先輩!?」
「おはよう…竜崎さん」
「すみません…もしかして皆さん怒ってましたか…?」
「え、なんで?」
「跡部先輩には必ず来いって言われてたのに…ごめんなさい!」
「あ、だ、大丈夫だよ?そんな…」

用事は別にこれと言って無いのだろうが、彼女を独占したいが為に呼んでいるだけの話だ。自分もまんまとその誘惑に乗っかっているわけだが、結局いつかは他の部員達に奪われてしまうかもしれない。

「い、今からでも間に合いますかね?謝りに行かなきゃ…」
「待って!」

焦りに駆られ、椅子が倒れる勢いで立ち上がった彼女の腕を慌てて掴む。

「俺が代わりに言っておくから、行かないで」
「…え?」

いや、焦りに駆られているのは自分か。

「俺と一緒にいて」

もう全てを告げてしまおう。夢現で呟いた言葉なんて意味を成さない。ちゃんと言わないと、君は鈍感だからさ。受け止めてよ、
「俺は君が。」
センチメンタル



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