ハニーハニー



なんだかいつもよりよそよそしいアミティの腕をきゅっと引っ張って、ぎゅうと抱き締めるとふわりと甘いにおいがした。いつもアミティはいいにおいがするけれど。今日のはなんだか違う。これはお菓子のにおい、プリンみたいな。お腹がすくにおいだった。僕はどうしてアミティからそんなにおいがするのか、すぐにわかってしまった。ああわかってしまわない方がよかったのに、頭に浮かぶのはあのヘンな魔導師の姿。

「アミティ」
「シ、シグ、くるしい」
「やだ、はなしたくないんだ」

さっきより力を込めてやった。アミティは何も言わない。逃げられないうさぎみたいにちょっと震えてる。それが逆になんだかとても悔しくて。

「アミティ、いいにおいがする」

わざと言ってやったんだ。自分でも気づいているだろうけど、一瞬僕を見て目をおおきく見開いたと思ったら、また逸らして。行き場のない手を腰に添え強く服をつかむ。さっきより力を弱めた。でもアミティのからだはまだ強張ってる。僕は赤い左手をアミティの頭にやった。あかぷよ帽ときいろい髪の毛の境目の辺りだ。

「怒ってないよ、だってアミティはわるくない。だけどとっても悔しいんだ」
「シグ」
「僕はきみが好きだけど、きみは僕の事をそこまで好きじゃない」
「そんなこと」
「きっとそうなんだ」
「違う、あたしはシグが」
「いわないで」

今そんなこと言われても、苦しくなるだけなんだ。僕の目を見てアミティは悲しそうに目を伏せる。だけどそんなことに目もくれず、弾けては香る甘いにおいがはやく消えてほしくて、僕はそれだけでいっぱいだった。抱きしめてもパタパタとはたいても変わらないから、ちゅーをしたら、甘くて苦い舌の味があたまの中を締め付けてくらくらとした。


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