ナルトがペット
サクラは学生。








「サクラちゃん、膝枕してあげよっか」
ざらざらとした質感のソファに座り膝を抱えてころころと転がっていたナルトは洗い物を終えて一息ついた私を眺めてそう言った。調子にのんじゃないわよ、足元にあったクッションを思い切り投げ付けると顔面に当たったのかブフッと声とも表現し辛い奇妙な唸りをあげのけ反った。

「いて…力つえー…クッションも剛速球だってばよ…」
「ふんだ、で、何を思っていきなり膝枕なのよ」
「いやだってさーなんか今日のサクラちゃん元気ねーんだもん」
「そんなことないわ」
「そう?ご飯ときもなんか箸進んでなかった気がするってば」
「ダイエット中なのよ」
「ふーん…」

クッションを抱えて顔を埋めるナルトの可愛らしい動作になんだか腹が立ったが、そんな事にいちいち文句を言っていたらキリがないし自分が虚しくなるだけだと思った。絨毯が敷かれた床へもう一つ近くに落ちているクッションを置いて、その上に腰掛ける。

「サクラちゃんって学校で何してるの?」
「勉強に決まってるでしょ」
「そりゃそーだけど」

ごろごろと落ち着きなく動きながらもじいと自分を見つめてくる。視線が気になりじとりと睨み付けてやると"ぬーん"と何が言いたいのかよくわからない声をあげて、なんとも腑に落ちなさそうである。

「やっぱサクラちゃん今日おかしいってばよ」
「は?」
「なんか目の感じが違う」
「なによそれ…」
「なんか嫌な事あった?ほら、聞いてやるから話してみろってば」

やたらと偉そうなのが気に喰わない。果てしないバカのくせに表情だけで私を見透かすのもやめてほしい。そんな事を考える私のことなんかまるで気付かないというようにソファの上に正座して太股の辺りをぼふぼふと叩きながら私を招き入れる。

「告白されたのよ」
「は…えー!?」
「うるさい」
「告白っ!?んだよそれ!オレのサクラちゃんにー!」
「誰がアンタのよ馬鹿いわないで」
「うう…」

泣く泣くとした表情で呟く"ペットって辛い"続いた言葉が胸に突っかかった。何故私は素直にOKすることが出来なかったのだろう。少し待ってくださいなどというお願いをしたのだろう。そんな理由分かっていて、それは全てコイツのせいだった。コイツはただのペットで恋人でも何でもないはずだというのに。気まずい気持ちになるのは脳裏にコイツの笑った顔が浮かび上がったからで、まさか私はナルトの事が好きなのか。そう気付いてしまった途端後ろめたさと冷や汗が止まらなかった。オレのサクラちゃん、そう彼が言うのも絶対に私が彼の事を好きになることはないという約束の前提があるからで。

「やっぱしてよ」
「お?」
「膝枕」
「おお!ほら!カモン!」
「馬鹿じゃないの」
「ほら、好きな人の膝で存分に泣くがいいってばよ!」
「誰が好きな人よ!あと誰が泣くか!」

少し寝るだけよ!そうぶっきらぼうに告げ頭を置いた膝は大して心地良くもなかったが、やたらと安心してさっき言ったばかりだというのに早速生温い涙が零れそうになって、優しく頭を撫でる彼の手が涙に触れないように、必死に自分の手の甲で誤魔化した。


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