《1.お礼なんていいんですよ
「っ!?」
ぞくりと背筋が凍る
誰かの手が私のお尻を撫で上げたのだ。
(痴漢!?)
何度も何度もゴツゴツした手がゆるゆると撫で上げる度に不快感に苛まれる。
恐らく犯人はプラットホームで私をニヤニヤと舐めるように見ていた中年男性だろう(実際、その人は乗車したときわたしの背後にいた)。
怖くて何もできずにいると、相手は私が抵抗出来ないことをいいことにスカートの中に手をいれてきた。
(や、嫌だ!)
涙で視界が滲んだ瞬間。
男の妙な唸り声が聞こえたかと思うと男の手が強張り、離された。
「残念でしたね」
聞き覚えのある声。
涙目で振り返るとそこには
「ろ、六道先輩…!」
痴漢の手首をギリギリと締めつける生徒会副会長の姿。
「ぐぅっ…」
「貴方には次の駅までこのまま大人しくしてもらいます。…なんなら今、電車から突き落として差し上げてもいいんですよ?」
それとも二度と社会復帰できないとても素敵なレッテルを貼ってあげましょうか、なんてさらりと笑顔で宣った先輩の目は笑っていなかった。
その後、恐怖で真っ青になった痴漢は先輩が次の駅で駅員に引き渡した。
引き渡したというより、寧ろ相手が自ら駅員に縋りついたという方が正しい。
「ごめんなさい…」
「おやおや、なぜ謝るのですか」
「私、先輩に迷惑かけて…」
「全く君は…僕が勝手にしたことですから」
「でも、」
食い下がる私に少し困った顔で笑う先輩。
すると、私の頭をぽんぽんと叩いて口を開いた。
「それに、こういう時はありがとうでしょう?」
「あ」
「ほら、凪さん」
耳元で彼の低音。
そんな声で囁かれると、正直物凄く恥ずかしい。
「…ありがとう、ございました」
「いえいえ」
なんとかそれだけを絞りだすことに成功した私だけど先輩の顔を直視できる訳もなく。
先輩は満足そうに、私の手を掴んで見惚れるような微笑みで、先程のように優しく囁いた。
「このまま、2人で学校サボりましょうか」
電車、副会長と痴漢
(本当は、感謝の言葉など彼女に言われる程、僕は良い人間じゃないんですけれどね)
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加筆・修正 100706
っていうか、早くこいつら公式でくっ付いちゃえばいいのに。
それか骸髑の需要供給増えればいいのに。