たった一言されど一言
「(あー…、暇)」
佳主馬はお風呂、健二さんはお部屋でお仕事中で夏希ちゃんはそのお手伝い
翔太兄は酔っ払って寝ちゃったし、子ども達はゲームに夢中
ぼーっとテレビを眺めていると、理一おじさんが私の隣に腰を下ろした
「暇そうだね、名前」
「理一おじさん、面白い話してー」
「そうだなぁ…、あ」
理一おじさんは少し考えてからニヤリと笑う
「とっておきの話、してやろうか」
「聞きたい!」
「これはな、俺の同僚に聞いた話なんだけど…」
***
「きゃああああああ!」
風呂から上がるのと同時に聞こえた名前の悲鳴
急いで服を着て居間に駆け込むと、名前が泣きながら抱きついてきた
「かずまぁ…っ!」
「…理一おじさん、また名前に怖い話したの」
「ごめんごめん、名前の反応が面白くて」
へらへらと笑う理一おじさんに小さく溜め息をつく
いつまでも懲りないおじさんに少し痛い目を見てもらおうと、両手の親指で名前の涙を拭いながら口を開いた
「あんまり名前をいじめてると、理介おじさんに言いつけるからね」
「…え」
さっきまで笑っていたおじさんの顔が一気に青ざめる
理介おじさんのことだ、名前を泣かせたとなればただじゃ済まないだろう
「おいで名前、今日は一緒に寝よう」
「うん」
「佳主馬!俺が悪かったから理介は勘弁してくれ!」
「自業自得だよ」
たった一言されど一言
(名前を泣かせた罪は重いよ)
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