最高級に甘い罠


一定のリズムで揺れる新幹線の座席に座りながらパソコンを開く
OZにログインすると、聞き慣れた女性の声が流れた



―OZ、パフォーマンスステージへようこそ―



白を基調としたいつもの景色が、今日は黒系統のコンサート会場を模したステージに変わっている
前回よりもかなり豪華だ



『…スポンサーの数がまた増えたんだ
観客も、3倍近く増えてる』



あまりのアバターの多さにステージに近付けずにいると、和服姿のアバターが目に入った



『カズマ!こっちこっち!』

『夏希姉ちゃん』



夏希姉ちゃんは最前列に立っていて、僕の為にスペースを空けておいてくれていた



『久し振り!もう長野にいるの?』

『まだ新幹線だよ、夏希姉ちゃんは?』

『私は明日出発なの
健二くん、仕事がなかなか片付かないみたいでさ』

『お兄さんも大変だね』



話している間にもどんどん観客が増えていく
アバターの名前の人気を改めて実感していると、会場全体の電気が一斉に消えた



『わあ…!』



隣で夏希姉ちゃんが小さく呟く
ステージ下から蒼色の淡い光が灯り、彼女のシルエットが浮かんだ



『アバターの名前…』



優しいギターの音と綺麗な歌声に鳥肌が立つ
久し振りに聞く彼女の声は少し大人っぽくなっていて、心臓が高鳴るのを感じた



『この歌、きっとカズマを想って作ったのね』

『…え?』

『久し振りに恋人に会えるのを楽しみに待ってる女の子の歌
とっても素敵だと思わない?』



ぱちん、とウインクをする夏希姉ちゃんのアバターを見て一気に顔が熱くなる
もう一度ステージに視線を向けると、アバターの名前が僕を見つけてふわりと笑った



最高級に甘い罠

(そんな風に笑うなんてずるい)

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