君なら運命にしてもいい


「名前!大変よ!」

「どうしたの?」

「これ見て!」



これ、と夏希ちゃんが差し出してきたのは一冊の雑誌
そこには大きな文字でこう書かれていた



「えっと、“今時の男の子はギャップに弱い”…?」

「そう!名前と佳主馬って結構長いこと一緒にいるでしょ?
いつもと違う一面を見せていかないと、いつか佳主馬に飽きられちゃうかもよ?」

「っ?!」

「今日だって佳主馬は1人で街に出掛けてるし…
可愛い女の子に声掛けられてるかも!」

「嘘…夏希ちゃん、どうしよう!」

「任せて!私にいい考えがあるの!」

「本当に?」

「私の言う通りにするのよ?」

「うん!」



***



「ただいま」



靴をぬいで納戸に向かう
名前の部屋の前に差し掛かった時、中からひそひそと声が聞こえた



「ほら名前、今よ!」

「夏希ちゃん、やっぱり無理だよ…!」

「何言ってるの!さっき練習した通りにやれば大丈夫だから!」

「夏希姉ちゃん、名前に何し…て……」



がら、と襖を開けた手が止まる
目の前にいる名前は何故かメイド服姿で、恥ずかしさからか顔を真っ赤にして涙を浮かべていた



「ほら、名前!」

「あの、えっと…」

「…名前?」




夏希姉ちゃんに背中を押されて名前が一歩前に出る
俯いたまま動かない名前の顔を覗き込むと、さらに頬を染めながら口を開いた



「お、お帰りなさいませ、ご主人様…っ!」

「!」



そう言って頭を下げる名前に理性が揺らぐ
そのまま彼女の手を引くと、夏希姉ちゃんをその場に残して納戸へと急いだ



「…えっと、佳主馬?」

「どうしたの、こんな格好して」

「ごめんなさい、やっぱり似合ってないよね…」

「そんな事ない」

「え?」

「…すごく、可愛い」



ぎゅ、と強く抱き締めると、名前はわたわたと慌て出す
そんな彼女が可愛くて小さく笑うと、不思議そうに首を傾げた


「で、どうしたの?」

「ふぇ?」

「今度は夏希姉ちゃんに、どんな入れ知恵をされたの?」

「…佳主馬には、なんでもお見通しなんだね」

「名前のことなら何だって分かるさ」



そう言うと名前は柔らかく笑って、僕が留守の間の出来事を話し出した



「で、名前は僕に捨てられると思ったんだ」

「…うん」

「…はぁ、全く」



夏希姉ちゃんめ、名前に余計な事を…
泣きそうな顔の名前に小さくキスをして、僕は手にしていた包みを差し出した



「私に…?」

「開けてみて」

「うん」



名前はまるで壊れ物を扱うかのようにそっと包装をはがしていく
そんな姿も愛しくて思わず口元が緩んだ



「これ…!」

「貸して、つけてあげる」



中から出てきたのは小さな箱に入ったシルバーリング
それを取り出して名前の右手をとると、そっと薬指に通した



「うん、ぴったり」

「これを、取りに行ってたの…?」

「そうだよ、名前は僕のモノだって証
受け取ってくれる?」

「嬉しい…!ありがとう、佳主馬!」

「僕が名前を捨てるなんて絶対有り得ないから」



本当に幸せそうに笑う名前を見て、僕まで幸せな気分になる
とは言っても彼女はまだメイド服姿で、僕の理性は限界な訳で、



「名前…」

「きゃあ!」



そっと抱き上げると、そのまま床に押し倒した



「えっと、佳主馬…?」

「お返しは、名前でいいよ」

「もう…」

「ご主人様の言うことは絶対だろ?」

「…優しくしてね、ご主人様」



君なら運命にしてもいい

(佳主馬、名前の可愛い姿が見れて良かったわね!)
(…夏希姉ちゃんが名前のメイド服姿見たかっただけでしょ)
(あら、バレた?)

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