夜と朝の間に沈む



「おかあ、さん…」



空が明るくなり始めた午前4時
小さく呟かれた言葉に目を覚ますと、隣で眠っている名前の瞳から涙が一筋零れた



「…どうしたの、名前」



僕の問いに彼女が答えることはない
次から次へと溢れてくるそれを親指でなぞりながらそっと抱き寄せると、名前がゆっくりと目を開いた



「かずま…」

「おはよ、名前」

「うん…、あれ、私泣いてる…?」

「小百合おばさんの夢見たの?」

「…見た、かもしれない」



名前は小さく頷いて震える手で僕のタンクトップを握り締める
そっと頭を撫でると縋るような目で僕を見た



「佳主馬は、居なくならないで…」

「…うん」

「私の傍にいて、お願い、佳主馬ぁ…っ」

「ずっと一緒にいるよ、僕は絶対に名前の前から消えない」



そう言って指を絡めると、名前は安心したように目を閉じる
濡れた頬が痛々しくて、思わず唇を噛んだ
この子の中にある悲しみが、少しでも減るように
辛い思いをした分、幸せな生活を送れるように



「…僕がずっと、名前の傍にいるから」



夜と朝の間に沈む

(愛してるよ、名前)

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