定刻通りに愛して
キングの後ろに浮かぶ[WIN!]の文字に満足して麦茶を飲む
もう1戦、とキーボードに手を伸ばすのと同時に
「佳主馬くんちょっと来て!」
健二さんに拉致された
***
「何、これ…」
「ごめん、僕がちょっと目を離した隙に…」
眼前に広がる光景に思わず頭を抱える
床に散らばるお酒の空き缶、上機嫌の夏希姉ちゃん、そして、
「あ、かずまだぁ!」
すっかり酔っ払った名前の姿
とりあえず名前が握っていた酎ハイの缶を取り上げると涙目になりながら夏希姉ちゃんに抱きついた
「夏希ちゃん、佳主馬がいじめるぅ!」
「佳主馬ひどい!名前に何するの!」
「こっちの台詞だよ!
名前にお酒飲まさないでって何十回言えば分かるの!」
「だって、名前可愛いんだもん」
名前を抱き締めながら唇を尖らせる夏希姉ちゃんに溜め息をつく
とにかく名前を連れ出さないと、と僕は口を開いた
「名前、おいで」
「やーだぁ、夏希ちゃんと一緒にいる!」
「…おんぶしてあげるから、行くよ」
「わーい!」
くるりと背中を向けると名前が乗っかってくる
そのまま持ち上げて部屋を後にすると、水を片手に納戸へと向かった
***
「ご迷惑お掛けしました…」
「本当だよ、いつの間に夏希姉ちゃんの所に行ったの」
目の前で正座する名前の頭を軽く小突く
すると、名前はおずおずと視線を上げて僕を見た
「だって、佳主馬が構ってくれないから…」
「…あ、」
名前の言葉に僕ははっと息をのんだ
良く考えたら、3時間近く名前をほったらかしていたことになる
「ごめん、僕…」
「…キスしてくれたら許す」
「え、」
予想外の発言に名前を見ると、耳まで真っ赤にして俯いていた
そんな姿に思わず頬が緩み、彼女の柔らかい唇に自分のそれを押しつけるとそのままゆっくりと押し倒した
「あ、あれ?」
「お詫びに、一晩かけて愛してあげる」
「〜〜〜っ!」
定刻通りに愛して
(月明かりに照らされた、白い首筋に噛みついた)
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