なけなしの愛でいいなら


「ん、ぅ…」



目を開くと見慣れた天井が視界いっぱいに広がる
少しだけ視線を右にずらすと、佳主馬が心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいた



「名前…?」

「かず、ま…」



ゆっくりと体を起こして佳主馬と向かい合う
佳主馬は腕を伸ばすと、私をそっと抱き寄せた



「名前、ごめん…」

「え?」

「名前のこと、守れなかった
おばあちゃんに、名前を絶対守るって約束したのに…!」

「…やめて佳主馬、私はちゃんと佳主馬に守ってもらえたよ
佳主馬がいなかったら今頃死んでたもん、こんなケガへっちゃらだよ!」



そう言って笑ってみせると、佳主馬も弱々しく微笑んだ



「あと、ありがとう」

「何が?」

「名前、あんな状況でも僕のこと愛してるって言ってくれた」

「…っ!あれは、その…」



あの時は必死だったけど、思い返してみると死ぬほど恥ずかしい
絶対赤くなってる顔を両手で隠すと、佳主馬がすっと立ち上がった



「佳主馬?」

「立てる?改めて、けじめつけようと思って」

「けじめって?」



首を傾げながらも佳主馬の手を借りて立ち上がる
すると、佳主馬が私と一歩距離を置いて向かい合った



「陣内名前さん」

「…はい、」

「僕は、まだ未熟な子供です
それでも、一生貴女を守り、愛したいと思ってます
もっと強くなるから、なってみせるから、
僕の…、池沢佳主馬の傍にいてください」

「…っ」



佳主馬の真剣な表情に涙腺が緩む
それでもそれを必死に堪えて、私も口を開いた



「私なんかで良ければ、ずっと貴方の傍にいます
陣内名前を、これからもどうかよろしくお願い致します…っ」



言い終わるのと同時に唇に柔らかい感触
びっくりして目を見開くと、佳主馬がくすりと笑った



「行こう、みんな心配してる」

「うん!」



差し出された左手に自分の右手を重ねる
佳主馬の手の暖かさが心地良くて、人知れず笑ったのは私だけの内緒



なけなしの愛でいいなら

(惜しみなく貴方に捧げましょう)

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