しおりの時間
「なぁ、お前らあの名門中学の生徒だろ」
「…まあ、学校は名門だけど」
「俺等さ、エリートぶってる奴らを台無しにして…なんてーか自然体に戻してやる?みたいな、そういう教育沢山してきたからよ、台無しの伝道師って呼んでくれよ」
「…さいってー」
「っ、カエデちゃん!」
思わず零れた本音に、目の前のリーダー格の男が手を上げる
でもそれより先に反応した名前が私を庇ってくれたせいで、私は無事だけど名前の顔には痛々しい痣が出来てしまった
「いいか、今から俺等10人ちょいを夜まで相手してもらう。東京に戻ったらまた皆で遊ぼうぜ、楽しい旅行の記念写真でも見ながら…なァ」
「…!」
その言葉の意図を汲み取って身体を震わせると、錆びついた出入り口が音を立てて開く
中に入ってくる複数の人影を見て男はにやりと笑った
「お、来た来た。うちの撮影スタッフがご到着だぜ」
***
案内をさせた仲間の1人を地面に叩きつけて中に入る
両手を後ろで縛られている名前の顔には明らかに殴られた痣が出来ていて、一瞬で頭に血が上るのが分かった
「こんだけの事してくれたんだ、あんた等の修学旅行はこの後全部入院だよ」
「…フン、中学生がイキがんな。呼んどいたツレ共を入れてこっちは10人、お前らみたいな良い子ちゃんには見た事もない不良共だ」
…まぁ、そんな事ないと思うけど
開いた扉に目をやれば登場したのは案の定殺せんせーと“元”不良達
とりあえずこいつらは任せるとして、俺は急いで名前の元に駆け寄った
「名前!」
「カルマくん!良かった、無事だったんだね」
「名前は無事じゃないみたいだけどね」
「名前、私の事庇ってくれて…」
「そうなの?…はぁ、名前らしいね」
名前と、ついでに茅野ちゃんを縛っていたロープを切ると殺せんせーに手渡されたしおりを受け取る
そのまま一気に振り下ろすと、ゴッと何とも小気味良い音と共に残党共が倒れた
***
「ありがとうございました、殺せんせー」
外に出ると名前は律儀に殺せんせーに頭を下げる
そんな名前の頭を撫でて殺せんせーはしおりを開いた
「いえいえ、それでは旅を続けますかねぇ」
少なくともこの班の誰よりも、下手したらクラスの誰よりもうきうきしてる殺せんせーは「早くしないと日が暮れちゃいますよー!」なんて言いながら歩き出す
そんな姿に俺と名前はくすりと笑って、せんせーの後を追いかけた
「にゅやッ、カルマくん!どさくさに紛れて銃を撃たないでください!」
しおりの時間
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