呪いの時間
二学期の始業式
夏休みから心を切り替え、勉強も暗殺も新しいステージへ
折り返しの9月、殺せんせーの暗殺期限まで…あと6ヶ月!
「…さて、式の終わりにみなさんにお知らせがあります」
式も終盤に差し掛かった頃、司会の荒木君がそう切り出す
「今日から3年A組にひとり仲間が加わります。昨日まで彼はE組にいました」
その言葉に、E組のみんなは一気にざわつく
私も思わずカルマくんの手を握ると、ステージ上に竹林君が現れた
「なんで…竹林君…」
小さくそう呟くと、カルマくんが手を握り返してくれる
彼のスピーチに体育館中から歓声が上がるけど、私達は教室に戻っても現実を受け入れられずにいた
「なんなんだよあいつ!百億のチャンス捨ててまで抜けるとか信じらんねぇ!」
「しかもここの事地獄とかほざきやがった!」
「言わされたにしたってあれは無いよね」
「ああまで言われちゃ黙ってらんねぇ!放課後一言言いに行くぞ!」
みんなの怒りは収まらない
どうしたら良いか分からずおろおろしていると、あっという間に放課後になってしまった
***
「説明してもらおうか、何で一言の相談も無いんだ竹林?」
「何か事情があるんですよね?夏休み旅行でも竹林君がいてくれてすごく助かったし!普段も一緒に楽しく過ごしていたじゃないですか!」
「…せいぜい十億円」
磯貝と奥田さんの言葉に、竹林が小さく呟く
「上手いこと集団で殺す手伝いができたとして、僕の力で担える役割じゃ…分け前は十億がいいところだね。僕の家はね、代々病院を経営してる。十億って金はうちの家族には働いて稼げる額なんだ」
「竹林…」
「“出来て当たり前”の家なんだ、出来ない僕は家族として扱われない。僕にとっては地球の終わりより百億よりも、家族に認められる方が大事なんだ。…裏切りも恩知らずも分かってる、君達の暗殺が上手くいく事を祈ってるよ」
「っ、竹林君!」
歩き出す竹林を名前が呼び止める
名前はぽろぽろと涙を流しながら微笑んだ
「合宿の時、一生懸命看病してくれてありがとう!これからもお互い頑張ろうね!」
「…ああ、ありがとう苗字さん」
竹林は最後にもう一度クラスの奴らを見渡すと、今度こそ振り返らずに歩いて行ってしまった
俺達のうちの何人かには「呪い」がかけられている
竹林はその呪いに殺されていくように感じた
呪いの解き方を、学校の授業では教えてくれない
呪いの時間
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