殺しの時間

肝だめし後、急遽決まった烏間・イリーナくっつけ計画
クラスのみんながそれぞれセッティングをしていくなか、私はイリーナ先生の部屋へ向かった



「イリーナ先生、入っても良い?」

「…名前ね、良いわよ」



中に入るとドレス姿の先生が鏡の前で座っている
ベッドの上には何着ものドレスが散らばっていて、私は小さく笑った



「素敵なドレスだね」

「私が持ってるなかで1番清楚なものを選んだんだけど…やっぱり肩が出ちゃうの」



しゅんとうなだれる先生に前を向いてもらって、私も背後に立つ
持ってきたショールを肩にかけると先生は驚いたように息を飲んだ



「これ…」

「売店で買ってミシンを借りて、ブランドっぽくアレンジしたの。先生が普段使ってるような本物のブランドのショールとは比べ物にならないくらい安物だけど…」

「ううん、嬉しいわ、ありがとう名前!」



喜んでもらえるか不安だったけど、笑顔のイリーナ先生に思わず胸を撫で下ろす
ブラシと髪飾りを渡されて先生の髪をまとめていると、不意に先生が呟いた



「…男なんて、みんなただの駒だと思ってたわ」

「先生?」

「使えるだけ使って、要らなくなったら捨てて、また新しい駒を見つけて…だから異性として意識したことなんてなかったの」

「うん」

「こんな気持ち初めてで、だからどうしたら良いか分からなくて…」

「…先生は、きっと先生が思ってるよりもずっと不器用な人なんだと思う」

「え?」

「だから積み上げた経験が逆に邪魔で気持ちに素直になれないだけなんだよ」

「じゃあ、私はどうしたら良いの?」

「どうもしなくて良いんじゃないかな。ありのままのイリーナ・イェラビッチを烏間先生にぶつけちゃえば良いんだよ」

「恋愛って、そんなものなの?」

「私はそう思うな。今まで大変だった分、幸せになってね、先生」



きゅ、と髪をゴムで縛って手を離す
先生は鏡の中の先生と私を交互に見つめた後、ふわりと微笑んだ



「…あの生意気な赤羽業が名前にあそこまで依存する理由が分かった気がする」

「もう、カルマくんは今関係ないもん」

「名前のお陰で何だか心が軽くなったわ、ありがとう」

「どういたしまして。頑張ってね、イリーナ先生」

「ええ、任せて!」



いつも通りの勝気な笑顔を見せて、先生は部屋を後にする
私もその後を追いかけてみんなの待つディナー会場へと向かった



殺しの時間
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