告白の時間

「あの、赤羽先輩!」



朝、E組の校舎へ向かう道の途中で待ち伏せていると赤羽先輩はいつも通りの時間にやって来た
…いつも通り、苗字先輩を連れて



「ん?誰だっけ、名前の知り合い?」

「違います!以前、赤羽先輩に助けていただきました!」

「そうだっけ?」

「はい!不良に絡まれていたところを、赤羽先輩が…」

「ああ、ごめん。多分たまたま機嫌が悪くて憂さ晴らししたかっただけだと思うから助けた記憶とかないんだ」

「そう、ですか…」

「だから気にしないで、じゃあね」

「っ、待ってください!」



苗字先輩の手を取って歩き出す赤羽先輩を咄嗟に呼び止める
思いのほか大きな声を出してしまい2人とも目を丸くしていた



「赤羽先輩、あの…!」

「何?まだ何か用事?」

「…苗字先輩、私赤羽先輩と2人でお話ししたいんですけど」

「あっ、気付かなくてごめんなさい。カルマくん、私先に…」

「駄目、1人で行動しないって何回言ったら分かるの?」

「でも…」

「今この場で言えないような用事なら悪いけど聞く気ないよ」

「そんな、赤羽先輩!」

「…あ、カルマくん!あっちからメグちゃんが来てるから、私メグちゃんと一緒に先に行ってるよ」

「えー、俺も一緒に…」

「ちゃんとお話聞いてあげて?学校で待ってるから!」



苗字先輩はそう言うとクラスメイトらしい人の元へ駆けていく
何とか赤羽先輩と2人きりになれてほっとしていると、先輩は大きな溜め息をついた



「…で?手短かにね」

「私、助けていただいたあの日から、赤羽先輩の事ずっと好きでした。付き合ってください!」

「はぁ?さっきまで名前がいたの見えなかったの?」

「苗字先輩との事は、赤羽先輩の元担任に聞きました」

「…あの野郎、勝手にペラペラ話しやがって」

「小さい時に交わしてしまった約束のせいで赤羽先輩は苗字先輩に縛りつけられてる…そんなの、おかしいです」

「俺が、名前に?」



ぴくり、赤羽先輩が私の目を真っ直ぐに射抜く
その瞳の冷たさに気付かない私は大きく頷いてから話を続けた



「赤羽先輩を追いかけてE組に編入するなんてストーカーみたいで気持ち悪いし…私なら、もっと素敵な彼女になれます!だから先輩、あんな人やめて私と…!」

「ねえ、さっきから何なの?」



赤羽先輩が胸ポケットから出したボールペンがぴたりと喉元に当てられる
突然の事に固まっていると先輩はぐっと顔を近付けてきた



「あんたに俺達の何が分かるの?」

「…っ!」

「よく俺の前で名前の事悪く言えたね」

「ごめ、なさ…っ」



怖い、怖い怖い怖い
目の前に立っているのは一体誰なの?
冷え切った瞳に歪んだ口元
私が恋したあの日の笑顔とはあまりにかけ離れたその顔に思わず腰を抜かすと、赤羽先輩は私に背を向けて歩き出した



「…そうだ、何も知らないあんたにひとつだけ教えてあげるよ」



ふと歩みを止めて、振り返って、
先輩は背筋が凍るような笑顔を私に向けた



「名前が俺を縛りつけてるんじゃない」

「…?」

「俺が、名前を縛りつけてるんだよ」



どこにも行かないように、ずっと俺の傍にいるように…ね?
そう言うと、今度こそ先輩は振り返らずに歩いていってしまう
私は声を出す事も出来ず、その場に座り込んだまま震える身体を抱き締めた



告白の時間
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