暴力の時間

「ん…」

「お目覚めかい?お嬢ちゃん」



クラスのみんなとカラオケにいた筈なのに、今いるのは見覚えのない倉庫
気絶させるために殴られた頭が痛んで顔を顰めると学ラン姿の男が目の前にしゃがみ込んだ



「お前、苗字名前だろ?赤羽業のツレの」

「そうですけど…」

「俺らの仲間がこの前赤羽に世話になったみたいでよ、そのお礼がしたいんだわ。でもアイツすげぇ強いだろ?だからお前を人質にとってみたって訳」

「そんな…!」



俺ら、と言われて周りを見渡すと数人の男達が武器を片手にニヤニヤと笑っている
いくらカルマくんが強くてもこれだけの人数を相手にしたらきっとタダでは済まない
さあっと血の気が引いていくのを感じて私は思わず目の前の男に縋った



「お願い、カルマくんに酷い事しないでください…!」

「はぁ?こっちは赤羽にボコられてるんだよ、仕返ししねぇと気が済まねぇの」

「なぁ、こいつ相当可愛くね?赤羽が来るまで味見してやろうぜ」

「お、いいなそれ!」

「ひっ…!やだ、やめて!」

「健気に抵抗しちゃってなぁ、そっちの方がそそるんだぜ」



わらわらと男達が群がってきて私の制服に手をかける
Yシャツを破かれスカートを捲られ、涙がぽろぽろと零れだしたその時、



「名前に触るな」



地を這うような低い声と共に、カルマくんが扉を蹴破って現れた



「カルマくん!」

「ごめんね名前、3分で終わらせるから」



近くに転がっていた鉄パイプを片手ににやりと笑うカルマくんに、リーダー格の男が私の髪を掴んで持ち上げる



「痛い!」

「赤羽ぇ!一歩でも動いてみろ、コイツがどうなっても知らねぇぞ!」

「…へえ、一丁前に名前を人質に取ったって訳。それで?条件は何?」

「俺らの気が済むまで殴らせろ」

「お兄さんら、中学生相手にここまでしないといけないの?情けないと思わない?まあ良いけど、名前には指一本触れるな」

「はっ、いつまでその余裕が続くか楽しみだ」



男の合図で一斉にカルマくんに殴りかかる男達
必死に駆け寄ろうとしたけど腕を掴む男の手がそれを許さなかった



「カルマくん!やだ、やだよ…!」

「大、丈夫…っ、全然痛くないから、泣かないで名前」

「カルマくん…!」



痛くない筈ないのに、カルマくんは私を安心させるためににっこりと笑う
怖さと悔しさで思わず唇を噛み締めると男の腕が肩に回った



「痛くないってよ、良かったな名前ちゃん。一緒に高みの見物と洒落込もうぜ」

「っ、これ以上カルマくんの事傷つけないで!」

「痛ってぇなこのアマ!」



左肩に置かれた指に思い切り噛みつくと男が一瞬怯む
その隙にカルマくんの元に向かおうとしたけど追いかけてきた男に殴られて転んでしまった



「名前に手ぇ出すなって言っただろ!」

「うるせぇ、こいつが先に仕掛けてきたんだ!」



私の上に馬乗りになってもう一度拳を振り上げる男にぎゅっと目を瞑る
するとその瞬間、聞き慣れた銃声が倉庫中に響いた



暴力の時間
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