肩書の時間

「名前さん、ちょっと良いかな」

「うん、どうしたの?」

「名前さんに聞きたい事があって…」



そう有希子ちゃんに言われてやって来た裏庭
2人で並んで腰を下ろすと有希子ちゃんがぽつりぽつりと話し出した



「名前さんは、どうして自分からE組に来たの?」

「え?」

「…うちは父親が厳しくてね、良い学歴良い職業、良い肩書ばかり求めてくるの。そんな肩書生活から離れたくて、名門の制服も脱ぎたくて、知ってる人がいない場所で格好も変えて遊んでたの」

「有希子ちゃん…」

「…バカだよね、遊んだ結果得た肩書は“エンドのE組”。もう自分の場所が分からなくて…そんな時に、A組の中でもトップクラスの名前さんがE組に編入してくるって聞いてすごく不思議だったんだ」

「ふふ、普通自分からE組に入りたいなんて人いないもんね」

「うん、だからずっと気になってて…」

「…肩書って、そんなに大切な事なのかな」



そう呟くと、有希子ちゃんは目を見開いて私を見つめる
そんな彼女に微笑んでみせてから私は話を続けた



「E組は確かに落ちこぼれ呼ばわりされるけど、私達は勉強も暗殺も前向きに取り組んでいるでしょう?学校や肩書なんて関係ない、清流に棲もうがドブ川に棲もうが、前に泳げば魚は美しく育つんだよ」

「名前さん…」

「肩書の上に胡坐をかいて人を見下してばかりの本校舎の生徒より、自分が今出来る事に一生懸命なE組の皆の方が私はよっぽど素敵だと思うな」



もちろん、有希子ちゃんも含めてね?
そう言うと有希子ちゃんもやっと笑顔になる
それから私達は昼休み終了のチャイムが鳴るまで夢中でお喋りをしていた



***



「おい見ろよ、神崎さんと名前ちゃんが何か楽しそうだぞ」

「あの2人が並んでると本当絵になるよね」

「ああ、清純派2人が織り成す空気…たまんねぇな」

「はい岡島、カメラ没収」

「ぎゃあああまたかよカルマ!謝る!謝るからカメラだけは!」



肩書の時間
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