伏魔の時間

「…という訳だ」



烏間先生から告げられた現状
正体不明の男が殺せんせーを狙っていること
奴らの機嫌を損ねれば治療薬を爆破されること
渚くんと茅野ちゃんの2人だけでホテルに来るように指定されたこと
あまりに俺達に不利な条件を突きつけられ、誰もが困惑していた



「どうするんスか?!このままじゃいっぱい死んじまう!殺される為にこの島に来たんじゃねーよ!」



吉田が半泣きでそう叫ぶ
すると、俺に寄りかかっていた名前が荒い呼吸を繰り返しながらもにっこりと笑ってみせた



「落ち着いて吉田君、私達ならそんなに簡単に死なないから大丈夫。じっくり対策を考えて?」

「お、おお。悪いな名前」

「でも言う事聞くのも危険過ぎるぜ。要求なんざ全シカトだ!今すぐ全員都会の病院に運んで…」

「賛成しないな、もし未知のウイルスならどんな大病院にも抗ウイルス剤は置いてない。対症療法で応急処置はしておくから、急いで取引に行った方が良い」

「竹林…」



敵の目的は殺せんせーだけど、渡しに行った2人を人質に取り薬も渡さずに逃げられたら最悪だ
どうする…交渉期限は1時間無い…
こうして考えている間にも名前はどんどん衰弱していって思わず爪を噛むと、殺せんせーの呑気な声が響いた



「良い方法がありますよ」

「え…?」

「律さんに頼んだ下調べも終わったようです。敵の意のままになりたくないなら手段は一つ、患者11人と看病に残した2人を除き、最上階を奇襲して治療薬を奪い取る!」

「…危険過ぎる、敵は明らかにプロの者だぞ」

「いや、行こうよ先生」

「赤羽君…」

「こうやって考えている時間がもったいない、代案を今すぐ考えてくれるならそれでも良いけど?」

「しかし…!」

「行きましょう、烏間先生」

「おお!ふざけたマネした奴等にきっちり落とし前つけてやる!」

「見ての通り、あなたの元には14人の特殊部隊がいるんですよ」



殺せんせーの言葉に、烏間先生も覚悟を決めたように律と急いで侵入ルートを計算する
俺は名前に自分の上着を着せると、熱い手をぎゅっと握った



「名前、俺が絶対助けてあげるから、あと少しだけ頑張って」

「気をつけてねカルマくん…」

「大丈夫、任せて」

「うん…、行ってらっしゃい」

「奥田さん、名前のことよろしくね」

「はい!任せてください!」



手の甲に小さくキスをしてから俺は名前の手を離す
全員の準備が整ったところで烏間先生が号令をかけた



「注目!目標山頂ホテル最上階!19時50分作戦開始!」

「「「おう!」」」



伏魔の時間
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