異変の時間
三村が編集した恥ずかしい映像
それをたっぷり見せられて精神的に参っている殺せんせーは、満潮によって触手がたっぷりと水を吸っているのにも気付いていなかった
よしよし、まずは計画通り
「さあ本番だ、約束だから避けんなよ」
だいぶ動きが鈍ってきたところで、成績優秀者達が触手に向けて銃を撃つ
2本の触手を破壊する権利を持つ名前に頼まれて、俺は名前の分を1本破壊した
そして銃声を合図に崩れる小屋、フライボードによる水圧の檻
急激な環境の変化に弱い殺せんせーのために木の小屋から水の檻へ、弱った触手を混乱させて反応速度をさらに落とす
そこで追い打ちをかけるように弾幕を張り、逃げ道を塞いでおいてのとどめの2人
千葉と速水が引き金を引くと、殺せんせーの全身が閃光と共に弾け飛んだ
「きゃあ!」
「っ、名前!」
爆風で飛ばされる名前の体を何とか抱きとめる
今までとは違う殺った手応えにクラスの誰もが目を輝かせるなか、烏間先生の声が響いた
「油断するな!奴には再生能力もある、片岡さんが中心になって水面を見張れ!」
「はい!」
その言葉通り、静かだった水面からブクブクと上がってくる気泡
銃を構える俺達が見たものは殺せんせーの顔が入った透明とオレンジの変な球体だった
「…何あれ?」
「これぞ先生の奥の手中の奥の手、完全防御形態!」
聞けば、エネルギー結晶で体を守った24時間限定の無敵の形態だと言う
殺せんせーはいつものように俺達の暗殺を褒めて烏間先生に連れて行かれたけど、周りの落胆は隠せなかった
かつてなく大がかりな、全員での渾身の一撃を外したショック
まるで異常な疲労感を感じているようにぐったりとホテルへの帰途につくクラスメイトに疑問を抱きつつも、とぼとぼと歩いている名前の手を引いて俺も皆の後に続いた
「しっかし疲れたわ…」
「自室帰って休もうか…もう何もする気力無ぇ」
「んだよテメーら1回外したくらいで、もう殺る事殺ったんだから明日1日遊べんだろうが」
ウッドデッキで項垂れる前原と三村に寺坂が声を掛ける
…何か変だ、いくらなんでも皆疲れ過ぎてる
烏間先生も険しい顔で誰かと電話しているし、なんとなく不穏な空気を感じていると、
「カルマ、くん…」
「名前!」
俺の隣に座っていた名前が、荒い呼吸とともに床に倒れた
異変の時間
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