島の時間
「ようこそ普久間島リゾートホテルへ、サービスのトロピカルジュースでございます」
青い空、白い砂浜、輝く太陽
この日が来るのをずっと楽しみにしていた私はカルマくんの手を握って大はしゃぎしていた
「晴れて良かったね、カルマくん!」
「そうだね、でも名前は毎年ここに来てるんだし少し退屈じゃない?」
「ううん、そんな事ない!だって皆と来るのは初めてだもん」
「確かに、昨日なかなか寝つけてなかったもんね」
「…っ!カルマくん気付いてたの?」
「あれだけ寝返り打ってれば嫌でも気付くって」
「うう、恥ずかしい…」
「ほら、1班が陽動始めたし俺達もそろそろ準備するよ」
「う、うん!」
特別夏期講習、なんて名目だけど私達の目的は担任の暗殺
今日のために皆で考え抜いた計画を何としてでも成功させるために、私もウエットスーツに着替えて皆と一緒に海に潜った
1つの班が殺せんせーと遊ぶ間に、他の班が着々と準備を進める
今までにない大規模な暗殺計画はここまで完全に予定通りだった
***
「夕飯はこの貸し切り船上レストランで、夜の海を堪能しながらゆっくり食べましょう」
「…な、なるほどねぇ…ですが、そう上手く行くでしょうか?暗殺を前に気合の乗った先生にとって、船酔いなど恐れるに足りません」
「…それにしても殺せんせー、黒く焼け過ぎて表情どころか前も後ろも分からないです」
「え、そんなに黒いですか?名前さん」
「はい、真っ黒です」
「ややこしいからなんとかしてよ」
「ヌルフフ、お忘れですか皆さん」
私の言葉にメグちゃんも続くと、殺せんせーは黒い皮を脱ぎ捨てて元通りの姿になる
「こんな使い方もあるんですよ、本来はヤバい時の奥の手ですが…あっ」
「うわ、暗殺前に自分で戦力減らしてやんの」
「どうして未だにこんなドジ殺せないんだろ」
この日のために、夏休みに入って密かに特訓を重ねてきた
仕込みも万全
今度こそ、殺せんせーにこの刃を届かせるんだ
「さぁて殺せんせー、メシの後はいよいよだ」
船酔いしてぐったりしている殺せんせーを連れてきたのはホテルの離れにある水上パーティルーム
「さ、席につけよ殺せんせー」
「楽しい暗殺、まずは映画鑑賞から始めようぜ」
島の時間
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