現場の時間
「…何コレ?プールが消えてんだけど」
名前の帰りを教室で待っていると、裏山から聞こえてきた爆音
急いで駆けつけてみるとプールは跡形もなく崩壊していて、ずぶ濡れのクラスメイト達が其処彼処に倒れ込んでいた
「…名前?」
だけど、どんなに探しても名前の姿が見当たらない
ざわざわと騒ぎ出す心臓を押さえつけながらふと視線を下に落とすと、瓦礫に足を挟まれた名前がぐったりと横たわっていた
「名前!しっかり!」
恐らく水底で足を挟まれて浮かんでこれなかったんだろう
心臓マッサージと人口呼吸を繰り返すと、名前は飲んでいた水を吐き出して咳き込んだ
「名前、良かった…っ!」
「カルマ、くん…っ、痛い!」
ぼんやりと俺を見た後、足の痛みに顔を顰める名前
片岡さんを呼んで名前を校舎に連れて行くように頼むと、近くにいた寺坂が呻いた
「…俺は…何もしてねぇ、話が違うだろ…イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに…」
「…なるほどねぇ、自分が立てた計画じゃなくてまんまとあの2人に操られてた…ってわけ」
「言っとくが俺のせいじゃねーぞカルマぁ!こんな計画やらす方が悪いんだ!皆が流されてったのも全部奴らが…!」
ああ、煩い煩い煩い
聞けば聞くだけ胸糞が悪くて、俺は寺坂の顔を思い切りぶん殴った
「名前が無事で良かったね、でなきゃ俺はお前のことこの場で殺してたよ」
「……」
「流されたのは皆じゃなくて自分じゃん、人のせいにするヒマあったら…自分の頭で何したいか考えたら?」
茫然とする寺坂を置いて行くと、イトナが殺せんせーを水中に引き摺り込む
全身濡れて動きが鈍っている殺せんせーは触手の射程圏内にまだ数人残っていることもあって押される一方だ
もしかしたら奴等に先を越されるかもしれない
そんな一抹の不安がクラス中に漂うなか、寺坂が俺の元へ来た
「奴等はこりごりだ、賞金持って行かれんのもやっぱり気に入らねぇ。だからカルマ!テメェが俺を操ってみろや」
「良いけど…実行出来んの俺の作戦?死ぬかもよ」
「やってやんよ、こちとら実績持ってる実行犯だぜ」
***
「…っ!」
「すまない、傷に響くだろうが少しだけ我慢してくれ」
「平気です、ありがとうございます烏間先生」
「それにしても、俺が本校舎に行っている間にそんな出来事があったなんて…」
足はまだ痛むけど皆のことが心配な私は、手当てをしてくれた烏間先生におぶってもらって裏山へと引き返した
…殺せんせーもカルマくんも皆も、無事だといいな
祈るような気持ちで沢に目を向けるとシロさんとイトナ君の姿はどこにもなくて、代わりにびしょ濡れのカルマくんが寺坂君に飛び蹴りをしていた
「…どうやら、今回も暗殺は失敗したみたいだな」
「はい!」
「あ、名前!怪我したって聞いたから心配してたんだよ、大丈夫?」
「カエデちゃん!大丈夫だよ、ありがとう」
「まだ治るまで時間がかかるから、それまで移動は手伝ってやってくれ」
「はーい!カルマ君、名前が帰ってきたよー!」
カエデちゃんの一言に、カルマくんは掴みかかっていた寺坂君をぽいっと放って私の元に駆け寄ってくる
少し見ない間に寺坂君がクラスに馴染んできていて、私はその事がとても嬉しかった
「名前!今から名前のために寺坂を処刑してくるからしっかり見ててね」
「あはは、うん、頑張ってカルマくん!」
「ちょ、悪かったって名前!頼むからこいつの事止めてくれ!」
現場の時間
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