約束の時間
「あの、カルマくん?」
「……」
家に帰ってきてから、カルマくんは私を抱き締めたまま離さない
ちらりと時計を見ると既に10分以上経過していて、私は意を決して脱出を試みた
「カルマくん、そろそろ夕ご飯作らないと」
「…後でいい」
「でも、まだお米も炊いてないし」
「名前、が、」
「うん?」
ぼそぼそと、首元に顔を埋めたまま話しだすカルマくん
「E組に来るって言った時、正直暗殺には向いてないだろうなって思ってた」
「うん」
「でも、今日の名前の姿見て、すごく怖くなったんだ」
「…私の事が?」
「ばか、違うよ。俺の知らない名前を、烏間先生は見抜いてた。誰よりも名前を知ってるのは俺なのに、俺じゃなきゃいけないのに!」
「カルマくん…」
悔しそうに、カルマくんは私の制服を握りしめる
そんな彼の背中をあやすように叩くと、一歩私と距離を置いた
「名前は俺のものだ」
「うん、そうだよカルマくん」
「どこにも行かないでね、ずっと一緒だよ」
「カルマくんも、ずっと私の側にいてね」
「分かってる」
差し出された左手の薬指に噛みつくのと同時に、私の薬指にも痛みが走る
いつからか、約束を交わす時は指切りではなく薬指に噛み痕をつける事が習慣になっていた私達
綺麗な赤紫色の“指輪”に唇を寄せて、私達は笑い合った
「愛してるよ、名前」
「私も、カルマくん」
約束の時間
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