指名の時間

「お前らは大事な家族なんだから、父親として1人でも欠けて欲しくない!家族みんなで地球の危機を救おうぜ!」



私達を手懐けるように、鷹岡先生は「親愛」と「恐怖」でこの場を支配しようとする
見せしめに前原君を蹴って逆らえば叩き、逆に従えば褒める事を私達に憶えこませる



「な?お前は父ちゃんについてきてくれるよな?」

「….ちょっと先生、その手、離してくれる?」

「赤羽、俺は今苗字さんと話しているんだぞ」



答えを急かすように、鷹岡先生は私の頭に置いた手に力をこめる
怖くて怖くて体が震えるけど、それでも私は先生の目を見てにっこりと微笑んでみせた



「私は嫌です、烏間先生の授業を希望します」



その瞬間、バチッという乾いた音と共に体が飛ぶ
遅れてきた痛みに思わず涙が浮かぶと、カルマくんと烏間先生が駆け寄ってきた



「名前!」

「大丈夫か?首の筋に痛みは?」

「大丈夫です」

「ねえ、俺の大事な名前に何してくれてんの?」

「ちゃんと手加減してるさ!大事な俺の家族だ、当然だろ?」

「いいや、あなたの家族じゃない、私の生徒です」

「とにかく、それ以上生徒達に手荒くするな。暴れたいなら俺が相手を務めてやる」



殺せんせーと烏間先生の言葉に、鷹岡先生はにやりと笑う
まるでこの時を待っていたかのように



「言ったろ烏間?これは暴力じゃない、教育なんだ。だからやるならあくまで教師としてだ、そこでこうしよう!こいつで決めるんだ!」

「….ナイフ?」

「烏間、お前のイチオシの生徒が俺と闘い一度でもナイフを当てられたらお前に訓練を全部任せて出てってやる!」



胸を張った鷹岡先生に、みんなの顔は輝く
しかし先生が鞄から取り出したものに、その表情は凍りついてしまった



「ただし使うナイフはこれじゃない。殺す相手が人間なんだ、使う刃物も本物じゃなくちゃなァ」

「よせ!彼等は人間を殺す訓練も用意もしていない!」

「安心しな、俺は素手だし寸止めでも当たった事にしてやるよ。さぁ烏間!1人選べ!嫌なら無条件で俺に服従だ!」



烏間先生はまだ迷っているみたいだった
でも、少なくとも私は、先生の迷いが嬉しかった
ただの任務じゃなくて私達の教師として、本気で悩んで考えてくれている
だから、私は…



「苗字さん、やる気はあるか?」

「…はい先生、やります」



この先生が渡す刃なら信頼出来る
いつもの対殺せんせー用ナイフとは違う、重みのあるそれを受け取って私は立ち上がった



指名の時間
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