はみだした日常
「田中さん田中さん!」
髪色の明るい少年が、目つきの悪い坊主頭の男に駆け寄る
「おー、日向」
「サッカー部の友達が“バレー部には美人のマネージャーが2人いる”って先輩から聞いたらしいんですけど、潔子さんだけっスよね?」
少年ー日向がそう問うと、田中はにやりと口元を歪めた
「そうか、お前らはまだ会った事ないんだったな!」
「え?」
「今日から復帰だって聞いてるけど…お!」
「へぶっ」
急に立ち止まった田中の背中に日向が勢い良くぶつかる
しかし田中はそんな事気にもとめず、目を輝かせて駆け出した
「名前!」
「わ、龍くん!久し振りー!」
体育館の入り口に立っていたのは小柄な少女
ふわりと笑って自分に会釈をする彼女に、日向は思わず赤面した
***
「よーし、みんな揃ってるなー」
軽いアップを済ませた部員たちに、主将の澤村が声を掛ける
彼の隣には先程の少女の姿があった
「1年は初対面だと思うから紹介しとくな。マネージャーの名前だ」
「初めまして、2年の苗字名前です。半年間アメリカに留学していて、昨日帰ってきました。今日からまた復帰するのでよろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げる名前に、日向はもちろん影山や月島でさえ微かに顔を赤くする
それを見た田中がにやにやと日向の頬をつついた
「なあ日向、名前ってすっげえ可愛いだろ!」
「はい!」
「だろォ?何たって去年のミス烏野だからな!」
「何でお前が偉そうなんだよ」
呆れたように言う菅原をよそに、田中は名前がいかに魅力的かを語り出す
名前は田中のそんな様子にはすっかり慣れているようで、軽く流しながら日向達に微笑んだ
「名前、教えてもらってもいいかな?」
「あ、俺、日向翔陽です!」
「影山飛雄です!」
「月島蛍です」
「山口忠です!」
「翔陽くん、飛雄くん、蛍くんに忠くんね!私の事は名前って呼んでね」
「うス!よろしくお願いします!」
「うん、こちらこそよろしくねー!」
「おーい名前、そろそろ練習始めるぞー!」
「はーい!じゃあみんな、今日も練習頑張ってね!」
そう言って名前は澤村の元へ駆けていく
その後ろ姿を新入生達はぼんやりと見つめていた
はみだした日常
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