ぼくはほしになる
「はあああ…」
休憩時間
俺は影山と特訓する訳でも田中さんとふざける訳でもなく、体育館の外でしょぼくれていた
近くに落ちてた石を投げたら柱にぶつかって跳ね返ってきて、それが何だかブロックに捕まったボールを連想させて余計惨めな気持ちになる
ぐ、と膝を抱えて顔を埋めると、後ろからぱたぱたと足音が聞こえてきた
「どうしたの?」
「あ、名前さん!」
俺の隣に座ってにこりと笑う名前さん
それだけで沈んでた気分が少しだけ軽くなるから不思議だ
「何かあったの?」
「あ、えっと…」
俺、名前さんの事大好きだから、こんな情けない悩みを打ち明けて良いのかな
だけど誰かに聞いて欲しいっていう気持ちが勝って、気付いたら口を開いていた
「…影山とか菅原さんのトスも、月島のブロックも、大地さんのレシーブも、田中さんのアタックも、みんなの長所っていうか烏野に必要な力ですよね」
「うん」
「でも俺は、影山に打たせてもらってるだけって言うか、影山がいなかったらコートに立たせてもらえないくらい下手くそだし…」
「…うん、」
「俺、バレー部に必要なのかなって思っちゃって…」
口に出したら、誰かに聞いてもらったら、
なおさら情けなくなって思わず地面を見つめる
少しだけ沈黙があった後、名前さんはくしゃりと俺の頭を撫でた
「例えば、龍ちゃん以外にもアタックを打つ人はいっぱいいるよね
でも、龍ちゃんほどパワーがある人はいないよね?」
「はい」
「龍ちゃんでさえ相手にブロックされたら止められちゃうのに、他の人が打ち抜けると思う?」
「…いえ」
「じゃあ、みんなはどうして点を決められるの?」
「え?」
「翔陽くんが飛んで、速攻を決めて、だからこそ敵はみんな翔陽くんを警戒して、そのお陰でアタッカーは自由になる、点を決められる
翔陽くんがいるのといないのとじゃ、みんなの決定率が全然違うんだよ」
「…!」
「翔陽くんだって立派なバレー部の一員だし、翔陽くんにしか出来ない事だって沢山あるんだよ
だから自信持って、ね?」
「オス!」
名前さんの言葉に、胸につっかえていた何かがすーっと消えていくのが分かる
何だか体まで軽くなった気がした
「そろそろ休憩終わっちゃうね」
「俺、頑張ります!」
「うん、頑張って!」
「はい!あざス!」
名前さんにぺこりと頭を下げてコートに戻る
俺はチビだしまだまだ下手くそだけど、
俺にしか出来ない事を精一杯やったら、名前さんも格好良いって思ってくれるかな
「じゃあ今から「影山!トス!トス上げて!」
「うるせぇ!今大地さんがしゃべってんだろ!」
「…2人とも静かにしてくれるかな?」
「「…っオス!」」
ぼくはほしになる
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