お決まりのワンパターン

「あ、」



夕焼け空の下を1人で歩いていると、道端に1匹の三毛猫
しゃがんで手を差し出すと、怯えたように一歩後ずさった



「駄目だよ飛雄くん、そんなに睨んじゃ」

「わっ、名前さん!」



いつの間にか俺の隣に名前さんが座り込んでいる
驚く俺を尻目に、名前さんはそっと手を伸ばした



「にゃー」



、!
名前さんが、今、にゃーって!
可愛過ぎだろ!と1人悶々としていると、猫がそろそろと寄ってきて名前さんの手をぺろりと舐めた



「ふふ、柔らかい」



そんな猫を抱き上げて、名前さんはゆっくり立ち上がる
つられて俺も立つと、名前さんがそっと猫を差し出した



「飛雄くん、抱っこ」

「え、いいんスか?」

「うん!ほら、怖くないよー」



俺が両腕を広げると猫はびくっと震えたけど、名前さんが優しく頭を撫でると大人しく俺の腕に収まった



「良かったねえ、飛雄くんに抱っこしてもらえて」

「名前さーん!」

「おーい、名前ー!」



遠くから自転車を押した日向と田中さんの声がする
ぎょっとして腕に力を込めると、猫が苦しそうに暴れ出した



「わっ、ちょっ、」

「飛雄くん?!」



足を取られてぐらりと身体が傾く
咄嗟に体勢を立て直そうとしたけど間に合わず、そのまま名前さんを巻き込んで倒れた



「いってぇ…名前さんすみませ…っ?!」

「あ、あはは…」



目の前に名前さんの顔、身体の下には柔らかい感触
これじゃあまるで…



「てめっ、何名前の事押し倒してんだ影山この野郎!」

「影山この野郎!」



ばたばたと駆け寄ってくる日向と田中さんの足音を聞きながら急いで名前さんから離れる
名前さんは顔を真っ赤にしながら照れたように笑った



「本当すみません!」

「えへへ、大丈夫だよー」

「け、怪我とかしてませんか?!」

「うん、平気!この子も無事だったみたいだし」



にゃあ、と足元で猫が鳴く
とりあえず名前さんが無事だった事にほっとしてると、後頭部に鈍い痛みが走った



「痛っ!」

「影山てめえ良い度胸してんじゃねぇか!」

「すんません…」

「龍ちゃん!こら!」



すごい顔の田中さんを名前さんが諌める
殴られたところは痛むし田中さんにはすげぇ怒鳴られたけど、まだ身体全体に残ってる名前さんの体温に顔が赤くなる



「飛雄くん、帰ろー!」

「影山ー!早くー!」

「…ありがとな」



きょとん、とする猫の頭を一撫でして、俺は3人の元へと走った



お決まりのワンパターン
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