唯一のひと

(結様へ愛を込めて!)



「名前、聞いて!」

「名前、これ、どうしたら良いのかな」

「名前ー!一緒にご飯食べよう!」



最近、千尋がやたらと名前に懐くようになった
見知らぬ世界に迷い込んできて、いきなり働けと言われた油屋で名前ような同世代の女の子の存在に救われる気持ちも分かるが…
名前が千尋と過ごす時間が増えるだけ、私達が2人で過ごす時間が減っていく
その事実が、堪らなく寂しかった



いつもなら名前と過ごしていた午後も、千尋が現れてから1人で過ごす事が多くなった
窓を開けて外を眺めると、近くの川で洗濯をしている名前と千尋の姿が目に入った



「名前、えい!」

「きゃあ!もう、やったなー!」


千尋が濡れた身体で名前に抱きつく
名前は楽しそうに千尋を受け止めたあと、ふと視線を上げた



「あ、ハクだ!」

「ハク?」



おーい、と手を振る2人に小さく手を上げて応える
名前は暫く私を見つめた後、千尋の頭をぽんぽんと叩いた



「ごめん、片付けお願いしてもいい?」

「名前、行っちゃうの…?」

「また後で会いましょう、ね?」

「うん、約束よ!」



名残惜しそうな顔をする千尋を宥めてから、名前が真っ直ぐこちらへ向かって飛んでくる
咄嗟に抱き止めるが勢いが強く、そのまま2人で部屋の中になだれ込んだ



「えへへ、失敗しちゃった」

「名前、そなたのせいで私までびしょ濡れだ」

「だって、ハクが寂しそうな顔してたから」



つん、と私の鼻を突いて名前が笑う
ああ、この愛しい存在は、私の考えなどとっくにお見通しだったのだ



「ああ、寂しかったよ名前」

「ごめんね、私もハクに会えなくて寂しかった」



ぎゅう、と抱きついてくる名前の腰に手を回す
久し振りの感触に、思わず頬が緩んだ



「…千尋、明日からは名前は譲らないよ」

「ん、何か言った?」

「いや、愛してると言ったんだよ」

「え!」



唯一のひと
(ハク!今私が名前と話してるの!)
(いや、名前は私と散歩に行くんだ)
(もう、みんなで仲良くしようよー…)
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