背負う命
「らららへーいちょう、らららへーいちょう」
壁外調査を終え、疲れた身体を引き摺ってベッドに寝転ぶと名前が俺の隣に寝そべって意味不明な歌を口ずさみ始めた
こいつも同じだけ動いたはずなのにここまで元気なのはやはり若さのせいなのだろうか
「機嫌が良いな」
「はい、とっても」
数時間前まで血肉が散乱する地獄にいたとは思えないほど、名前はにこにこと穏やかに笑っている
手持ち無沙汰に髪を手で梳いてやると、両手で俺の手を握って小さく口付けた
「兵長、」
「どうした」
「今日も生きててくれて、ありがとうございました」
「…何だそれは」
「ふふ、何でしょう、でも嬉しいんです。兵長が生きててくれるのが」
「俺は巨人を絶滅させるまで死なねえよ」
「絶滅させてからも死なないでください」
「お前は俺に不老不死にでもなれと言うのか、名前よ」
「やだなあ、そこまでわがままじゃないですよ」
名前はそう言うと右手を握って左胸の丁度心臓の辺りに置く
「私は今も昔も、そしてこれからも兵長に心臓を捧げます。だから兵長も、いつか巨人のいない平和な時代がきたら、その時は、」
私のために、生きてくれますか
人類最強だと持て囃され、この残酷な世界に生きる全ての人間の希望を一身に背負わされて剣を振るい続けてきたこの俺に、生きる理由を与えてくれると言うのなら、
生きてほしいと、そう願ってくれるのなら、
俺も同じように敬礼のポーズをとると、もう片方の手で名前を抱き寄せた
背負う命
(お前と生きる未来のために、俺は戦おう)
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