つめこむラブユー
※ミカサ姉、リヴァイ彼女
「エレン!アルミン!」
「名前さん!」
「わあ、こんにちは名前さん」
洗い場で芋を洗っていると駆け寄ってきたのは、“調査兵団兵士長補佐及び訓練兵指導教官副長官”っていう難しくて地位の高い役職についている名前さん
他の訓練兵なら顔を青くして敬礼するだろうけど、僕らにとっては少し年上の幼馴染み
彼女の本名は名前=アッカーマン、つまりミカサのお姉さんだ
「お願い2人とも、助けて…!」
「え?助けてって「もちろん!名前さんの頼みなら何でもやるぜ!」
僕の言葉を遮ってエレンは即答する
ああ、あんなに赤い顔しちゃって…
半ば呆れていると名前さんはぱっと顔を輝かせた
「ありがとう!とても困っていたの」
こっち、と走り出す名前さんに手を引かれて僕らも後に続く
エレンなんか鼻歌交じりで上機嫌だけど、この後すぐに僕らは軽い気持ちで名前さんについて行ったことを後悔する羽目になった
***
「…あれを止めるのか?」
「うん、お願い!」
「むむむ無理だよ名前さん!あんなの僕らには絶対無理!」
ひょこ、と3人で廊下の角から顔を覗かせる
視線の先にいるのはミカサと、人類最強と謳われるあのリヴァイ兵長だ
「お前みたいなチビに姉さんは渡さない」
「お前がどう喚こうと勝手だが、邪魔をするようならこの場で削ぐぞ」
名前さんによると、訓練を見学に来た帰りに偶然ミカサと兵長に会ったらしい
そこで2人がそれぞれ夕飯に名前さんを誘ったことから口論が始まり、1人では止められなくて助けを呼びに行って僕らを見つけた、と
「どうするアルミン、何か良いアイデア無いのか?」
「ええ、そんな急に言われても…!」
「ごめんね2人とも、私が頼りないせいで…」
しゅん、と項垂れる名前さんに何だかこっちが悪いことをしている気分になる
何とか円満に2人を止められる方法を考えていると、突然ミカサと兵長が揃ってこっちに向かって走ってきた
「姉さん!」
「名前!」
右手をミカサ、左手を兵長に掴まれる名前さん
一瞬の出来事に思わず固まる僕らを余所に2人はまた名前さんを挟んで口論を始めた
「姉さんを離せ」
「それはこっちの台詞だ、いい加減姉離れしたらどうだ」
「私の命が尽きるまでそれは絶対に有り得ない」
「お前もこんな妹を持って大変だな、名前よ」
「軽々しく姉さんの名前を呼ぶな」
「ふ、2人とも、その辺にしたら…」
「エレンは黙っていて!」
片腕でミカサに投げ飛ばされたエレンが廊下を派手に転がる
早く2人を止めないと口論から本当の喧嘩に発展するかもしれない…!
そうなる前に何としてでも2人を止めるため頭をフル回転させていると、不意に名前さんと目が合って僕の脳裏にあるアイデアが浮かんだ
「…2人とも、良いんですか?」
「あ?」
「ミカサと、それにリヴァイ兵長も…大好きな名前さんを泣かせて」
僕の言葉に2人が目を見開く
名前さんは2人に挟まれたままぽろぽろと涙を流していた
「姉さん、どうしたの?どこか痛むの?」
「どうした名前、何があった」
「2人とも、喧嘩、やめてください…!」
それだけ言うとさらに顔を歪める名前さんに、2人は喧嘩していたことも忘れておろおろと両手を彷徨わせる
もう一息、と僕は作戦の成功を確信して畳み掛けた
「そんなに名前さんのことが好きなら知ってるでしょう?名前さんが、喧嘩が嫌いなこと。ねえ名前さん」
「私、ミカサちゃんも、リヴァイさんも、大好きだから…っ、だから2人が喧嘩すると、悲しいです…!」
その言葉に、2人はばつが悪そうに視線を彷徨わせる
そして2人揃って名前さんの涙を拭った
「ごめんなさい姉さん、姉さんが望まないことはしない」
「悪かったな、お前のこと考えてなかった」
「…リヴァイ兵長、今日は姉さんを貴方に譲ろう」
「そうか」
「でも、私はまだ、2人の事を認めた訳じゃない」
「そのうち嫌でも認めさせてやるよ」
帰るぞ、と極力優しく呟いた兵長の言葉に、名前さんはやっと笑顔を見せる
2人の背中をどこか寂しそうに見送るミカサに、僕はそっと声を掛けた
「戻ろう、ミカサ」
「…うん」
「明日の立体起動の訓練、名前さんが教官だからすぐに会えるよ」
「うん…エレン、なぜ廊下で寝ているの?」
「お前のせいだよ!」
つめこむラブユー
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