まだ見ぬ永遠

※甘くない
※何が書きたかったのか分からない
※何でも許せる方だけどうぞ



名前が可愛がっていた白い野良猫が、ある日川辺で死んでいた
まだ寿命を迎えるほど老いてはいなかったから病を患っていたのかはたまた鳥に襲われたのか、時を戻さない限り死因を知る術は残されていないけれど、
昨日まで名前に甘えて喉を鳴らしていた猫が今日はぴくりとも動かない様は何だかとても不思議な光景のように思えた



「名前、そろそろ戻らないと体が冷えてしまうよ」



名前は泣きじゃくることも嗚咽を漏らすこともなく、はらはらと両頬を涙で濡らしながら静かにその死を悼んでいる
ぱん、と彼女が手を叩くと石ころが転がるだけの殺風景な川辺に色とりどりの花が咲き乱れた



「ねえ、ハク」

「何だい?」

「私もハクも、いつか死ぬ時が来るのかな」

「そうだね、いつか必ず」



人間に比べて遥かに長い寿命を持つ私たちにも、いつかは必ず死の瞬間が訪れるだろう
その“いつか”が明日なのか何百年も先なのか、そんなことは私にも名前にも分からないけれど



「私、ハクより先に死にたい」

「どうして?」

「だって、残される身は、こんなにも辛いから」

「…それなら私も、名前より先に死にたい」

「駄目よ、ハクは死んじゃ駄目」

「それは難しい注文だね」



おいで、と抱き寄せると名前は素直に私の腕の中に収まる
私よりも頭ひとつ分小さな体は、悲しみを受け入れるのに精一杯で震えていた



「じゃあ、死ぬ時は一緒に」

「そんなこと出来るの?」

「分からないけど、もし名前が死を迎えようとしていたら、私も名前と共に逝こう」



約束、と小指を絡めると名前はやっと小さく微笑む
愛しい彼女となら、何処へだって行ける
そう、例え死後の世界であっても



まだ見ぬ永遠
(縋ることを覚えた)
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