想いが永遠に変わる

「川の主にも成長期ってあるのかしら」



ぽつりと呟くと隣を歩いていたハクはきょとんとした表情で足を止めた



「名前?」

「だって、ハクったらここ最近ですごく背が伸びたじゃない?」

「そうかな?」

「そうよ!」



ハクは首を傾げるけど、それは誰が見ても明らかだった
出会ってからもうだいぶ経つけど、昔は同じくらいの背丈だったのに今は私よりも頭ひとつ分大きい
身体つきもがっしりしてきて、どこからどう見ても“大人の男性”という感じを醸し出していた



「どうしてそんなに大きくなっちゃったの?」

「どうしてって言われても…」

「ハクの背なんて縮んじゃえば良いのに」

「名前、今日は何だか機嫌が悪いね」



ハクは困ったように笑って私の頭を撫でる
そう、私は今とっても機嫌が悪い
ぎゅうっと抱きついてハクの胸に顔を埋めると、ハクも優しく抱き締め返してくれた



「理由を、教えてくれるね?」

「…油屋の女の子達が、」

「うん」

「ハク様は最近とても格好良くなられましたね、名前様が羨ましゅうございますわって」

「うん、それで?」

「昔はほら、ハクも人間の子供みたいな容姿だったけど今はすっかり変わっちゃって、やっぱりみんなハクの事意識しちゃうんだなぁって思ったの」

「誰も名前から私を奪おうなんて恐れ多いこと考えやしないよ」

「でも、もしお客様にとても綺麗な方がいらして、ハクの事気に入ってしまったらどうするの?」

「名前は、私を信じてくれないのかい?」

「いいえ、でも…きゃあ!」



突然抱きかかえられて、小さく悲鳴を上げてしまう
ハクはそんな私を見ると、お互いの額をくっつけて笑った



「名前は昔から、今と変わらず美しかったね。だから私は自分が嫌いだった」

「え?」

「名前の隣に立つと、どうも自分が釣り合っていない気がしてね」

「ううん、昔からハクは格好良かったわ」

「でも身体は小さかったし、筋力もなかった。だから私は今、こうして名前に見合うような男になれてとても嬉しいんだ」

「ハク…」

「今も昔も、そしてこれからも私は変わらずそなたを愛し続けよう」



そう言って、ハクは優しく微笑む
込み上げる幸せに思わず涙が零れ、私は彼に触れるだけのキスをした



想いが永遠に変わる
(幸せなときも泣きたくなるなんてね)
(あなたに出会うまで知らなかったよ)
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