同じ空の下、違う未来を

「徹ちゃん、」

「ごめん、近付かないで」



おずおずと歩み寄ってきた名前を思わず制してしまう
俺の、青葉城西高校男子バレーボール部のIHは今日で終わってしまった
愛する彼女がマネージャーを務めている烏野高校に、負けてしまったから



「ねえ、名前」

「え…?」

「名前達の試合はまだ、続いていくんだね」

「…うん」

「良いなぁ、羨ましいなぁ」



そこまで言って、耐えられなくなってその場にしゃがみ込む
名前がそっと隣に座っても、今度は何も言えなかった



「ごめんね、名前の前ではもっと完璧な彼氏でいたいのに、こんな弱いところ見せちゃって」

「ううん、そんな事ない」

「名前には悪いけど、勝つつもりでいたんだよ」

「うん」

「格好良いところ見せたかったんだけどなぁ」

「格好良かったよ」

「あはは、慰めてくれてありがとう」

「慰めじゃ、ないよ」



そっと手を握られて、思わず顔を上げる
名前の瞳から一筋の涙が溢れた



「マネージャー失格かもしれないけど、徹ちゃんが1番格好良かった」

「…泣き虫の彼氏でも?」

「今まで頑張ってきたから、悔しくて涙が出ちゃうんだよね。それは格好悪いことなんかじゃない」

「ああもう、名前には敵わないなぁ」



ぐっと抱き寄せると、名前の体温がじんわりと体に広がっていく
ふと遠くで彼女を呼ぶ声がした



「ごめんね徹ちゃん、私もう行かなきゃ」

「うん、行っておいで」

「また連絡するね」

「待ってる…あ、ねえ名前」

「なあに?」

「おめでとう、次も頑張ってって、主将くんに伝えて」

「…うん!」



じゃあね、と手を振って名前を見送る
悔しくて悲しくて仕方なかったくせに、心なしか少しすっきりしたような気がした



同じ空の下、違う未来を
(俺のために泣かないで)
(俺のためになら、どうか笑って)
_

[ 7/13 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -