君のためのヒーロー

(はる様へ愛を込めて!)


朝、寝坊したと俺の家の前でぐずぐず泣いていた名前を自転車に乗せて全速力で学校に向かった
(ちなみに間に合った。何て良い彼氏なんだ、俺!)

数学の時間、開始5分で夢の世界へ旅立っていった名前のために眠い目を擦ってノートをとっておいてやった
(でも理解は出来なかったから結局2人でスガさんに教えてもらった)

昼休み、弁当も財布も忘れるという(ある意味)偉業を成し遂げた名前に購買でパンとジュースを買い与えた
(ありがとう!と笑う名前は最高に可愛かった)



そしてついさっき、



「うひゃあああああ!」

「うわあああ、名前さーん!」



名前が何もない所で盛大に転んだ
あたふたする日向を尻目にポケットから絆創膏を出して擦りむいた膝に貼ってやると、それを見ていた大地さんが笑った



「本当、田中は名前の母ちゃんみたいだな」

「えっ!」

「本当、彼氏って感じはしないよな」



大地さんの言葉にスガさんも同意する
確かに、友達にも親みたいだと言われる事は良くあるけど彼氏だと思われる事は滅多にない
寧ろ付き合っていると言うと毎回驚かれる



「そんなに彼氏っぽくないっスかね」

「そうだなー、母ちゃんの方がしっくりくるな」

「マジっすか…」



男として、好きな女の彼氏だと思われない事は何か凄くショックだ
じゃあどうすれば彼氏っぽく見えるのか
悶々と考えていると、それまで黙って聞いていた名前がぎゅうっと抱きついてきた



「龍くんは私の大事な彼氏さんですよー」



ふわふわと笑う名前にかぁっと顔が赤くなる
大地さんとスガさんは一瞬面食らった顔をした後、2人して名前の頭を撫でて笑った



「そうだな、田中は名前の事良く分かってるしな」

「はい!お世話してくれます!」

「田中に世話してもらうのか、何か笑えるな」

「龍くんすごく優しいんですよ!この前は1年生の女の子に声掛けて泣かれちゃってたけど」

「それは言わなくていいんだよ!」



名前の口を塞ぐとくぐもった声で楽しそうに笑う
そんな時、影山が俯きながらぼそりと呟いた



「名前さん、スカート…」

「スカート?」

「スカート、めくれてます!」

「は?…ぎゃああああ!」

「ひゃああああ!」



転んだ拍子にめくれ上がったらしいスカートを慌てて元に戻す
俺は名前を抱き締めながら辺りをぎろりと睨んだ



「…お前ら見てないよな」

「みみ、見てません!ピンクのパンツなんて見てません!」

「日向てめええええ!」

「ひいいいごめんなさい!」



逃げる日向を追いかけて体育館中を走り回る
俺はきっと、これからも名前の世話を焼き続けるんだろう
彼氏に見えなくても、名前の笑顔を守れるなら、



「名前愛してるぞおおおお!」

「田中さんすげぇ、日向のこと追いかけ回しながら愛を叫んでる!」

「はーい、部活中だってこと忘れないでねー」



君のためのヒーロー
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