いつだってそばにある

「ハク、いる?」

「いるよ、おいで」



ハクの部屋に入ると、私はハクに抱きついた



「千尋ね、油屋で働くことになったよ」

「上手くやったみたいだね」

「ハクのお陰ね、ありがとう!」

「私は千尋を迎えに行っただけだよ、頑張ったのは名前だ」

「でも、私1人じゃ助けられなかった」



私は普段、油屋が開店してから店を出る事は殆どない
もしあの時千尋を迎えにもう一度油屋を出ていたら、きっと湯婆婆も私をもっと疑っただろう



「リンを千尋の世話役にしたの。リンならきっと良く面倒を見てくれるわ」

「そうだね、リンが適役だ」

「でも、千尋大丈夫かな。他のみんなにいじめられてなければ良いんだけど…、後で様子を見に行かなきゃ」

「…名前は、随分と千尋を気にかけるんだね」



隣で、ハクが静かに呟く
その表情はどこか寂しげで、私は彼の手を握った



「どうしたの、ハク」

「いや、何でもないよ」

「私に隠し事をする気?」



向かい合ってじっとハクの目を見つめる
ハクは暫くした後、諦めたように息を吐いた



「取るに足らないつまらない事を考えてしまっただけだよ」

「つまらない事?」

「千尋がこの世界に来てから、名前は千尋の事ばかり考えているだろう?」

「うん、そう言われてみれば…」

「千尋が来るまでは、名前は常に私の事を考えてくれていた
だから何だか少し…、いや、かなり寂しいんだ」

「もしかして千尋に嫉妬したの?」

「少しだけ、ね」



そう言うとハクは私を抱き寄せる
そのせいでハクがどんな顔をしているかは分からないけど、髪から覗く耳は赤く染まっていた



「ねえ、ハク」

「うん?」

「どうして私が自分の名前を持ちながら油屋で働いてるか知ってる?」

「…いや、」

「もちろん油屋が好きだからっていうのもあるわ。でもね、それよりも、ハクがいるからよ」

「私が?」

「うん、ハクがここにいる限り私もここで働くし、ハクが出て行く時は一緒に辞める
そのくらいハクが大切で大好きなの」

「名前…」

「私はハクが1番だよ、ハクがいれば何もいらない」

「私も、名前が私の全てだ」




ハクの背中に腕を回してぽんぽんと背中を叩くと、ハクの腕の力が強くなる
顔だけ動かして頬にキスをすると、ハクも小さく愛してると呟いた



いつだってそばにある
(ねえ、ハク、私今とても幸せ)
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