愛を囁く君の声
…まさか、まさかさァ。
あのツーショットを見るとは思わないじゃない?
…少し前、俺はブラブラとかぶき町を歩いていた。ええ、勿論パチンコ帰りですとも。盛大に負けましたともスッカラカンですとも。
こりゃ帰ったらナマエにどやされる…!と若干怯えながらもきっと彼女のことだ。結局は許してくれるだろう。その変わりしばらく糖分摂取禁止令が出そうだけど。
…あ、なんかそっちの方が怖ェ。
だからその前に糖分を、とファミレスに寄る。それがそもそもの間違いだとは思わずに。
最近のお気に入り、生クリーム盛り沢山の苺パフェを堪能しそろそろ帰ろうとしていた時だった。カラン、と鳴った入客を知らせる鈴の音。何の気なしに視線をやった。何の気なしに、だ。
すぐに逸らして席を立つつもりだったのに。俺の目は入ってきた人物に釘付けだった。…そうなっても仕方ない事が今目の前で起きている。
「…なんで、」
真っ黒い服で全身を塗り固めた税金ドロボー。何故かいつも変なとこで出会う、大嫌いなアイツ。その隣をさも当然だというように歩くのは俺の恋人。彼女は真選組の女中をしている。
ある意味同僚な二人は楽しそうに話しながら少し離れた席に着いた。冷静を装う、大人になれ俺、と努めるもののやはり苛立ちは隠しきれなくて。
…多分、二人は飯でも食いに来たんだろう。
ただ、それだけだと頭では分かっているのに沸き上がるこのドス黒い気持ち。どうにも止められそうになくて、ガタ、と席を立つ。
自分の会計を済ましてから二人が座る席に向かって。
「…よォ、久しぶりじゃんお二人さん」
そう声をかけて、振り向いた彼女の腕を引いて席から連れ出して。驚いた顔で俺を見る二人から目を逸らして出口へ歩きだす。
「っちょ、銀ちゃん!?あ、土方さんごめんなさい!」
背後で聞こえたその声にすらムカムカする。
ファミレスを出て、しばらく。それから俺たちの間に訪れた沈黙に耐えきれなくなった頃、聞こえてきた小さなため息。
「…銀ちゃんのせいでお昼ご飯食べ損なったじゃん」
奢りだったのにさぁ、と残念そうな声が聞こえてまたイライラする。なんで?そんなにアイツといたかった?
俺よりも、アイツがいいの?
「…悪かったな!邪魔して!」
「なに怒ってんの?」
「別に怒ってねーしっ!なんだよ、アイツがいいなら最初からそう言えば!?そりゃーアイツに比べれば俺は稼ぎも甲斐性もねェし?糖尿寸前だし目は死んでるし!?良いとこなんか何にもねーけどよォ!」
「ちょ、どうしたの?やばいよ?目が逝ってるって」
「それでもナマエのこと一番好きなのは俺だしィ!愛してるのも俺だしィ!あんなマヨラー瞳孔ヤローには負けねーし俺!つーか負けるわけねーし!ックソ!なんであんな奴相手に妬いてんの俺ありえないんですけど!」
「…え、えええ?」
一気に捲し立てた後にハッとして。彼女の前での俺ってこんなキャラじゃなかったのに、とか。違うから、銀さんクールだから硬派だから、とか。
とにかくこんな取り乱した自分を。本音を。彼女にぶつけたことなんてなくて。だから押し寄せてくる不安に、たまらなくなって。
幻滅されたらどうしよう。もし、嫌われたら…。
頭に浮かぶのはそんな感情。何とかして言い訳しようと顔を上げて、固まった。
「…ナマエ?お前…顔真っ赤だけど」
「うっうるさいなぁ!銀ちゃんがキャラでもないこと言うから!」
纏まらなかった言い訳は頭の中から消えてった。まるで茹で蛸みたいな真っ赤な顔のナマエを見て。
…彼女は、ずっと大人だと思っていた。声を荒げるところなんて一度も見たことないし、付き合うことになった時も笑ってはいたけどこんないっぱいいっぱいな顔はしてなかった。
…いや、それは言葉が足りなかったせいかもしれない。俺は彼女に好きだと言ったことは滅多にない気がする。ましてや愛してるだなんて。
そっか。そういうことか。
「あ、あのさァ…ナマエ」
「な、なに?」
「あー、なんつーか…アレだ。アレだって」
「アレって何よ!」
「だからァ…銀さんはァ、ナマエのことがァ…」
「…私は、」
「え、?」
「私は銀ちゃんのこと、大好きだよ」
その言葉に何も言えなくなる俺を彼女はしてやったり顔で笑う。あぁ、こんな顔もするんだって初めて知った。やっぱりこいつには敵わない。
だけど、俺にだってプライドっつーもんがある。言われっぱなしじゃ男が廃るじゃないか。
目の前で余裕な顔して笑うナマエの腕を引いて、胸の中に閉じ込めて。
「…俺は愛してるもんね」
耳元で囁けばやはり真っ赤に染まる彼女。だけど、その彼女の肩に隠れて同じように朱に染まる俺はどうやらまだまだ、らしい。
end
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まりも様へ捧げる相互記念でございます!
し、しかしご要望頂いた銀時嫉妬からの甘。
甘になってるでしょうか!!?←
まりも様のみお持ち帰りフリーです!
こ、こんなので宜しければどうぞ…!
恋愛中毒管理人 ゆみ
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