愛を伝えて
見廻りをする時にいつも通る花屋がある。
この時間に決まって水まきをしている店主。ミョウジナマエさん。
最初は会釈だけだったが次第に話すようになり今では長話をするようになった。
「おはようございます!随分と寒くなりましたね」
『あっ、近藤さん!おはようございます!本当ですよね!吐く息が白いですもの』
バケツを下に置き手に息をかけるゆみ。
『ハァー…寒〜い!』
「あっ!そうだ!もし良ければコレをッ!」
近藤はポケットから懐炉を出し、ナマエに差し出した。
『えっ?でも』
「き、汚くないですよ!?さっき使ったばっかりだから!あぁ…でも嫌ですよね?」
手を引っ込めようとすると、ナマエは懐炉を取った。
『嫌なんて、とんでもない!嬉しいです。それに汚いなんて思っていません』
顔を真っ赤にさせ話すナマエを愛おしく見つめる近藤。
―なんて可愛い人なんだ。今度デートに誘ってみようかな? いや、まだ早いか―
『近藤さんはお花好きですか?』
「花の種類や名前は分からないけど好きですよ!」
『じゃあ、今度屯所の方にお花を届けさせて下さい!懐炉の御礼に』
「いやいやいや!御礼なんていらないです!逆にお金を支払うんで、いくつかお花を持って来て下さいよ」
『でも、それじゃあ…』
「良いんですってば!お任せするのでコレでお願いします。」
近藤は財布から万札を何枚か出した。
「うちは野郎共ばっかりでむさ苦しいんで、花が色々な場所に飾られたら少しは華やかになるでしょ!俺、明日は休みなんで運ぶの手伝います!パトカーですけど」
『クスッ!私用で使ったりして大丈夫ですか?明日でしたら友達にお店番してもらえるか頼んでみますね』
「わかりました!では明日迎えに来ますね」
―よしっ!デートの約束は出来なかったけど明日は立ち話だけじゃなく、ゆっくり会えるんだ―
近藤は顔を緩めながら見廻りへと歩いて行った。
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