どうもこんにちは。
死ぬ間際に
『次に転生したら平凡な俺が可愛い女の子に囲まれたあげくに、死ぬほど愛されて眠れなくなる人生を送りたい』
という魂の叫びをを転生の際に神様にリクエストして

だいたいわかった。
まかせろし。

という今時のランドセルよりもかるーいノリでかなえてもらったら、肝心の『女の子』の部分だけスルーされていたものです。

今日も今日とて可愛い男の子に囲まれて(苛立ちで)眠れない日々を過ごしていますが何か。


そんな俺が唯一、この時代に転生できて良かったと思うことがある。

それは、イベントごとが少ないという点である。

これでもしクリスマスやらバレンタインがあってみろ。
恋愛フラグが乱立しちゃうだろ。

だから、秋は芋名月くらいしかイベントないし平和でよきかな、なんてぼんやりしていた。
もしも過去に戻れるのなら、自分の胸ぐらを掴んで『ここは俺がくい止めるから早く行け!』と怒鳴りつけているところだ。
ん?これって死亡フラグか?




「…名前先輩、似合いますか?」

「なんなの?誰なのはろうぃんとか広めちゃった奴俺が憎いの?」

「似合いますか?」

「腹立つくらい似合うわ畜生ホント何でお前男なんだよ作法委員全員爆発しろ!」





やたらに見目麗しいくせに全員男だという点で、俺にとって作法委員は鬼門以外の何物でもないのだ。
その中でも目の前で上目遣いに俺を見るこいつ、綾部喜八郎はできれば避けて通りたい人間のうちの一人だ。

正直見た目がどストライクなのだ。

これで女の子だったなら今頃「綾部は俺の嫁」と公言していただろう。

…しかし、




「…綾部、それは誰の入れ知恵だ?」

「企画・立花先輩、衣装デザイン・鉢屋先輩、衣装制作・くのたま有志一同です」

「鉢屋は俺を怒らせた」

「立花先輩とくのたまは良いんですか?」

「こわいからいい」




綾部は、とてもハロウィンらしい格好をしていた。

黒のドレス状のワンピースに頭には尖った帽子。
所謂魔女の格好だ。

男のする格好じゃないだろ、野郎は大人しく南瓜でもかぶってろ。

そうは思うものの、やたらと似合ってるのだからとんでもない。

そこそこ露出が多いのに、上手く男っぽいラインを消すデザインで厚めのマントのおかげで肩幅が気にならないしゆったりとした袖で日頃の穴掘りで鍛えられた腕も隠れた。

足元はひらひらとしたミニスカートで、黒のレースで縁取られたニーソックスを履いている。
ご丁寧にヒールのついた靴まで履いてるんだが。
時代背景仕事しろ。

鉢屋は才能を無駄遣いしすぎだろう、存在が残念すぎる。





「名前先輩名前先輩」

「あ?なんだ?」





言いながら俺の服の袖をちょいちょいと控えめに引っ張るその姿に思わずぐらっとくる。

ああ、もう男でも良いかもしれない。
こんなに可愛い子が女の子の筈ない。
…いや、なにを考えてるんだ俺は……!
気をしっかり持て…!

きっちり誰かに化粧でもしてもらったのか、桃色の艶やかな唇が開いた。




「お菓子をくれないと悪戯しますよ?(性的な意味で)」

「おっとあぶねー!!
危うく新世界の扉を開くところだったぜ…!」





俺は朝起こしてもらったときに『これ護身用だから』と言って真剣な顔で勘ちゃんが持たせてくれた飴玉を綾部に渡した。勘右衛門さすがすぎる、幼なじみスキル半端ねぇ!

綾部は可愛らしい顔と可愛らしい格好のまま、チッ!と舌打ちをしている。
綾部怖いちょう怖い。

その後、俺はハロウィン期間中は極力気配を消して生きていこうと心に決めた。













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