諸君、ギャルゲーは好きだろうか。
俺は大好きです。

どれくらい好きかというと、転生の際に何よりも先にギャルゲーの主人公的生活を祈ったくらい好きです。
お察しの通り、末期です。
そう呼んだ方がいいでしょう。

さて、ギャルゲーというものには欠かせないポジションがある。
それが『友達』である。

主に女の子の情報を教えてくれたり、物語の進行を手助けしてくれたりだ。
…たまにあれな雰囲気になるのもあるがそこはスルーで。
ただでさえこんな状況なのに、これ以上横道に逸れたくはないのだ。


さて、今現在神様が適当に俺の夢を実現化してくれたおかげで、
男だらけのパラダイス状態になっているがこんな俺にも友達は、いる。

多分、友達。
うん。
俺、あいつらだけは攻略する側にまわってほしくない。
しないけどな、攻略。
俺男落とすくらいなら一生独り身でいい。
彼女いない暦=年齢上等。DT上等。
俺将来妖精さんになる。

ギャルゲーにおける男友達、といえば大体が
『イケメン』か『変態』だ。
時々イケメン担当と変態担当とに分かれる。
たまに変態は普通に女の子大好き人間になったりとパターンは多々ある。

で、俺にとっては多分こいつらがそうだ。





「おーい、一緒に飯食おうぜー」

「名前、お前の分とっておいてやったからな。
えーと鰻定食にスッポンの生き血で良かったよな?」

「良くねえよお前俺をどうしたいんだ、そもそも無いだろうがそんなメニュー!」





…まあ。

イケメンと変態、というよりはむしろ
タケメンと変態なんだが。

あ?
変態部分が変わらない?
鉢屋を見て、変態以外の何に当てはまると言うんだ。
今の言動から考えても結構な変態加減だぞ。





「俺の癒しの不破は?
もしくは最終兵器保護者の勘はまだか」

「名前…私がいるのに他の男の話か?
相変わらず男の敵だな、お前は」

「俺鉢屋が何を言っているのかわからない。
なんなの?お前は俺を苛立たせるために生まれてきたの?」

「いやだな名前、そんなに見つめられると惚れるだろう」

「せめて照れるで止めとけ」





二人並んで座っていた所を、食堂で手招きされたので
俺はしぶしぶ近寄って真ん中に一つ席をあけて待っていたらしい竹谷と鉢屋の、竹谷の隣に座った。
並び順で言うなら、俺、竹谷、空席、鉢屋だ。
でかいリアクションでショックを受けているらしい鉢屋と、俺の行動に苦笑しながらもいつものことなので特に何も言わない竹谷。
まわりから見たら、まるで鉢屋がハブにされているようにも見える。

このまま竹谷と内緒話をしながら時々鉢屋をちらちら見て笑いあってやろうか!

陰湿さでは女に負ける気はしねえぞ!





「名前、お前本当に相変わらずだな」

「鉢屋がそもそも相変わらずなんだから仕方が無い」

「一年の頃からこうなんだから慣れろよ名前」

「さり気なく竹谷に変装していけしゃあしゃあと話しかけんな鉢屋。
人の肩に勝手に腕まわすな、ちょ、やめろ、やめて下さるー!?」

「うぉ、名前!
お前人が飯食ってるときに引っ付いてくんなよ!」

「あ、悪い竹谷。
ほら鉢屋お前もとっとと飯食えよ!
それとも不破が戻ってくるまで待つのか?」

「……雷蔵は、今日、図書委員の後輩達と食べるって……」





途端にしょんぼりしたように萎れて、俺の隣に座った。
…大人しくはぶられ席に座ればいいものを。
もそもそとご飯を食べながら、構ってほしそうにちらちら横目で見てくる鉢屋を無視しながら俺は竹谷とおかずのトレードをしながら昼食を楽しんだ。

ああ、おばちゃんの作るご飯ってなんて美味しいんだろう。

俺将来料理上手で可愛い女の子をお嫁さんにするんだ…。





「そういや名前。
お前次の授業何?
もし火薬の資料持ってて使わないんだったら貸してくんね?」

「次実習だから別にいいぞー。
俺の資料は凄いぞ、勘と久々知の書き込みつきだからな」

「へ?なんで?
勉強でも教えてもらったのか?」

「いや?
資料見てたらここテストに出やすいよ、とかいって横から二人で勝手に書き込んでいった。
あいつらすげーわ、流石い組。
前回の火薬の授業の抜き打ちテストでそっくりそのまま出た」





あの時は思わず、
『あ!これチャレンジでやったところだ!』
とかボケをかましたくなったがおそらく通じないだろうから我慢した。

俺は心の中であいつらを赤ペン先生ならぬ赤筆先生と呼んでいる。
もうすぐあるテストに向けての計画表とか渡してくるもんだから、余計にそう思う。
…ていうか俺はあいつらにとってどういうポジションなんだ。

俺の言葉に竹谷は感心したかのように、おほー、と口癖なんだか何なんだかよくわからない言葉を呟いてからにかっと笑った。






「まあ、そうだろうな!
今の所その二人が一番好感度高いしな!」

「ぶほっ!」

「うわ、汚いぞ名前!
なんでわざわざ私の方を向けて味噌汁をふいた!」

「わ、悪いつい本能のままに…。
いやそうじゃなくて!
た、竹谷お前今なんて…?」

「ん?」






俺の聞き違いじゃなければ、今竹谷の口から好感度とかいう単語が飛び出してきたような気がする。

俺の問いに対して竹谷はから揚げを頬張りながら不思議そうに俺を見る。
反対側では鉢屋が手拭いで顔にかかった味噌汁を拭っている。
…どうでもいいが鉢屋その手拭い前不破も持っていたような。
また(一方的に)お揃いで揃えてるのか。





「い、今なんて…?」

「なにがだ?」

「勘右衛門とかがどうこう…って、ほら」

「ああ!勘右衛門だな!
あいつは…おほー!こりゃすげえ!お前にベタ惚れみたいだぞ!?」

「それなんてギャルゲーにおける情報屋?
いや、うん。
いるけどさ、いたけどさあそういうポジションのやつ」





道理でお前と話してても好感度の上がり下がりの音が聞こえない筈だ。

でもこれで安心した。
竹谷は向こう側の人間にはならないだろう。
そりゃあそうだ。
ギャルゲーでも別に学校中の女子生徒全員から好かれているわけじゃ無かったしな!
せいぜい数人程度だろう、多分。

ちょっと恐怖が減った、と同じく焼き魚を口に放り込めば
何故か隣からぴろりーん、という音がした。
はて、誰か来たのか?





「名前、私は放置プレイか…?
そんな趣味があったなんて知らなかったが、
千の顔を持つ男であるこの鉢屋三郎がお前好みに染まってやろうじゃないか…!」

「何これ、どうなってんの鉢屋どうなってんの何で音鳴ったの」

「ああ!三郎だな!
こいつは…」

「言うな!言わないでくれ!言わないで下さい!お願いだから!!」





俺は今日また一つ世界の不思議に近づいた。

誰か可愛い女の子俺と結婚を前提にお友達からお付き合いして下さい。
…七夕か正月にでもそうお参りしたら叶わないかなー…。






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