一人七年生祭り 3
2の続き。 相変わらず好き勝手申し訳ないですノシ
大和君、つつじ君、たたき君お借りしました! 方言すいません! (いっそ胸をはって謝る私)
廊下を歩いていると、見知った三人組がいた。 そのうち二人は何故かじゃんけんをしている。 はて、また何か揉め事かと思い眺めていると何度めかのあいこの後、黒髪の同級生がぐっと拳を握った。 勝敗が決まったらしい。
今日は珍しく、平和的な解決だったんだなと思いつつ近江は三人に声をかけた。
「大和君、つつじ君、たたき君。おはよ…」
「こ、湖滋郎!」
「は…?」
声をかければこっちを見て、意を決したかのような表情で真剣な目で近江に向き直ったのはつつじであった。 若干顔が赤いのはどういうことだろうか。 つつじは小走りにこちらに近寄ってきて、そして。
「うわ!ちょ、つつじ君!?」
「…………大和!はよせれ!」
勢いに任せて、ぎゅうっと羽交い締めにされた。 …訂正、抱き締められた。
普段抱きついてきたり、スキンシップを率先してとりにくるのは大和の方だったのでつつじの珍しい行動に近江は行き場のない手をどうするべきかと固まった。
にやにやと楽しそうに笑いながら、後ろから近づいてきた気配に後ろを見れば至近距離に大和がいてゆっくりと腰に手を回されぺたりとくっつかれる。 どうでも良いけれど、やんわりとした動作がひどくこそばゆいのでいっそのこと勢いできてくれた方が幾らかよかった。
何故挟んだ。 なんだこの体制は。
近江は少し考えてから、前にいるつつじと後ろからくっついている大和を見比べてにっこりとした笑顔を作る。 それに体をびくつかせたのは正面から直視したつつじだった。
近江は行き場のなかった両手を、するりとつつじの背中へとまわした。
「つつじ君?」
「…なん?」
「みんな揃って、一体何を企んでるんかなぁ?」
「いや、別に…」
「ワシらはただこじたんに抱きつきたかっただけじゃけ、のう?つつじ? ほれ、ぎゅー」
「……」
「いちゅくしま、湖滋郎がえらい疑った顔しとるぞ」
「うっせ!」
誤魔化すように、力を込めてくる大和に近江はいつもの笑顔が消え真意を伺うようにしてじっとその顔を見た。 つつじの背中に回した手にも、さらに力を込めた。 因みに純粋な感情からではない。 逃がさないためにである。
視線を合わせようとしないつつじに、近江が目を細めたその時今まで無言で見守っていたたたきが動いた。 ゆっくりと近江に近づいて、じっと見下ろしとから大きな手を近江の頭に乗せた。 整えられた髪を崩さないようにと気遣われながら軽く撫でられ、近江はぽかんとしながらたたきを見た。
しばし、無言で見つめあう。 そして、
「…いや、うんうん、やなくて」
どこか満足そうに頷いたたたきに、近江は思わず突っ込んだ。 なんなんだ一体。
そのまま暫くの間ぎゅうぎゅうと抱き締められて、やがて満足げに解放されて何事もなく去っていく三人を近江は狐につままれたような顔で見送った。
小話 2011/05/02 00:45
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