一人七年生祭り 2


1の続きです。
基本携帯打ちなので色々と表現がシンプルです。

和歌ちゃん、金沢君お借りしました!
方言すいません!
(堂々と)







朝起きて、一番はじめに思ったこと。

どうしてこうなった。

朝になり、うっすらと目を開けて見じろいだ近江はゆるりと撫でられるような感触に内心で首を傾げた。
六年長屋にいる人間で、見知った気配がするということは間違いなく六年生の誰かなのは確かだが。
目を完全には開けないままどういう状況なのかと考えた。
しばらくそのまま大人しく撫でられていた近江は、部屋に現れたもうひとつの気配に完全に覚醒した。


「あ、起きた?」

「悠一君…?」

「おいね。
今日は休みやし、起きるには早いがや。
いんぎらぁっとしまっし」

にこにこと笑いながら、頭を撫でていた金沢に近江は驚いた。
きっとまた誰かが何か企んでいたり、面白半分で悪戯しているんだろうと思っていた。
だがしかし、あまり自分から悪戯の類いをやりださない金沢が手の主だったという状況に、起き抜けということも手伝ってうまく頭がまわらない。

ぽかんとする近江に、違うところから声がかかった。


「あれ?湖滋郎はん起きはったん?」

「和歌ちゃんまで…?」


色とりどりの髪紐を片手に私物らしい櫛を手に、にっこりと笑いながら手招きした。


「おはよう、髪整えてあげるわ。
こっちに来て座り?」

「…おはよう…?」


ぽんぽんと、自分の前にスペースを作り移動を促す和歌に首を傾げれば金沢がすっと水の入った盥と手拭いを持ってきた。
にこにことした笑顔に押されて、近江は促されるままに顔を洗い和歌に近づいた。


「ああ、ちょっと痛みぎみやねぇ。
椿油つけとくわ」

「え、ああ…」


丁寧に櫛でとかして、返事を待たずにさっさと椿油をつける和歌を鏡越しにぼんやりと眺める。
さすがに手際が良い。
一通り整えたところで、和歌が目線で指した。


「髪紐、どれがええ?」

「え?これ和歌ちゃんの私物やろぉ?」

「うん、ひとつあげるわ。
その若草色のとかどうやろ、湖滋郎はんに似合うと思うえ?」

「でも、」

「うん、思った通りよう似合てはるわ。」

「………」


口を開けば遠慮の言葉が飛び出すとわかっている和歌はさくさくと髪を整えていった。
元々、物をなんの裏もなく貰うということに躊躇する人間である、ということを六年間でよく知っているからこその強引さだった。

さらりと揺れる自分の髪を物珍しげに眺める近江に、二人は楽しげに口を開いた。



「さて、湖滋郎」

「あとは着物だけやけど…なんやったらそっちも着替えさせまひょか?」


何なんだ、このコンビネーションは。

近江は首を左右に振り、申し出を丁重に断った。

今日は朝からどうしたんだ一体。
着物に袖を通しながら頭のまわりに疑問符を飛ばす近江だったがこれはまだはじまりにすぎないということを、このあと思い知ることになる。





小話 2011/05/02 00:38
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