「リドル!リドル、どこだリドル!」
「まったく騒々しいなお前は…おはようくらい言えないのか。それと私はリドルではないと、」
「よ、かったぁ………」
なまえはその場にへたりこんでボロボロと泣きはじめた。いきなりリビングに飛び込んできたかと思えば突然泣きだすなんてこいつの行動は予測不可能だ。さすがの私も手に負えないぞと心の中で呟いてみるものの、なんだかんだで放っておけないのが現実だった。しかたなくソファーまで運び、横抱きにしたまま自分の膝に乗せてやる。なまえはまだ泣き止まない。
「いったいどうしたんだ」
「怖い夢を、見た」
「泣くほどのか」
「うん。リドルがいなくなっちゃう夢だった。もう最悪だ死にたい」
首に抱き着いてきたなまえの背中をあやすようにぽんぽんと叩く。掛けてやる言葉を必死で探してみるが見つからない。だいたい私がいなくなればほぼ全ての人間が喜ぶだろうに、そっちのほうが不幸せだと言う人間はお前くらいだ。なぜたくさんの命よりたった私一人の命を大切にするのか。なぜそこまで私に固執するのか聞いてみたい気がしたが、どうせ帰ってくる言葉は愛してるからだよ、だろう。愛なんて不確かなものは信じるのをやめたはずなのに、どうしてこんなにも愛しいのか。
「お願いだよリドル、どこにも、行かないで」
「行かないさ。行くわけないだろう。私だってお前を愛しているんだからな」
勢いよく上がった顔はいつもよりもマヌケ顔だった。こんなだらしない顔でさえ大切にしてやりたいと思うのだから、よっぽど私も重症だと見える。それでも、少しくらい信じてみたっていいだろう。その愛とやらを。
ほがらかに融解(110719:ハリーポッター)