俺は国である自分がなによりも嫌だった。国が終わるまで生きつづけなければならないし、かといって自ら滅ぶことは許されない。生まれながらも死んでいける人間が羨ましかった。

「……なんてな」

「イギリスは人間になりたかったんだね」

「そんなんじゃねぇよ。ただ羨ましいだけだ」

「…嘘つき。本当はなりたいんでしょう」

なまえの手が俺の頬を撫でる。さすがは農家の娘なだけあって、掌からはほのかに土の匂いがした。どぎつい香水を嗅ぎ慣れた鼻はなんなくその匂いを受け入れる。

「私が神様だったらよかったのに」

「あ?」

「そうしたらイギリスを人間にしてあげられたよ」

そうして涙を流したなまえの頬に触れてやることはできなかった。しかしその涙を見たときに俺は初めて人間になりたいと思った。そうすればきっとなまえだって泣かなくて済んだんだ。どうしようもなくなって泣きはじめた俺を、なまえは優しく抱きしめた。大の大人が二人して泣いているなんて端から見たら馬鹿みたいだろう。それでも俺達は神様じゃないから泣くことしかできないのだ。








神になりたかった(110315:ヘタリア)

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