蹴落とせたはずの罪悪感




「お前、ほんとに女かよ……」

「これくらいでへばっちゃ勝負にならないよエスカバ」

「うっせ…手加減くらいしろよ」

「してる。エスカバが弱いのがいけないんでしょ。でもいい線行ってると思うよ。大体の人は逃げるんだけどね…正々堂々と向かってきたことは褒めてあげてあげよう」

「次こそ勝つ」

「一つ、約束してほしいことがあるの」

「あ?」

「絶対逃げないで。どんな戦いでも、諦めないでさっきみたく正々堂々と戦うって約束して」

「ハッ…俺が逃げるわけねーだろ。死に物狂いで戦ってぜってー勝ってやるよ」







先ほどのヒビキ提督の言葉を聞いて内心凍りついたのは俺だけではないはずだ。逃げて生き延びるくらいなら戦って死ね。それが俺たちとなまえの約束でもあり、美学だった。最初は俺が逃げるような奴だと疑っているのかと思ったが、ミストレとバダップの二人にも約束させたことを知り、安心した覚えがある。実際、四人チームで軍事演習を行ったときもなまえは逃げるくらいなら戦って死のう、と高らかに宣言した。
なまえらしいといえばなまえらしいが、その約束のせいで死んだとなれば話は別だ。その死に様が浅はかだとは思わない。むしろそこまでできるのはすごいと思う。だからこそ、罪悪感を感じてしまう。もし大勢の敵に恐怖を感じて逃げていればなまえは生きていたかもしれないのになまえはそうしなかった。それでこそ俺たちのなまえだと分かっているのに、もしノコノコと帰ってきたとしても許せなかっただろうことくらい分かっているのに、心のどこかでなまえが生きていればと考えてしまう。


さっきまでなまえが死んだことを信じていなかったくせに、いつのまにか死んだことを受け入れてる自分がそこにいた。ああ、そうか。これが人の死なんだ。なまえは、死んだ。それが美学や約束だとしても、変えようもないない事実と罪悪感がそこにあった。こんなことならなまえが死んだなんて信じたくなかった。






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