なまえはこの俺にむかって、勝たなくてもいいとぬかす阿呆だ。勝たなくてもいいから、怪我をするな。それが試合前のなまえの口癖だった。どこをどう考えて俺が怪我をすることになるのかまったく検討がつかない。本来ならば、氷室のように相手チームを心配すべきだろう。俺に破壊される敵を。
「がお、」
「怪我をするなだろう?この俺がするわけないだろう、たわけ。興ざめなことばかり言うな」
「ごめん。頑張ってね、峨王」
ぎゅうと一瞬だけ俺の腰に抱きついて、離れたなまえの顔は先ほどのものとはまったく違う戦うやつの顔であった。そうだ、その顔だ。その強い眼差しがいつだって俺に勝てと言うのではないか。