▼理解しきれてないところもあるので、設定間違いもたぶんあります
見るからに重そうな鎖を、ジャラリと揺らして歩み寄ってくる比企が、痛ましくて、助けてあげたくて、溢れでる涙を拭うのも忘れて、ただ手を伸ばした。鎧糸の止める声をかき消すように、比企の名を呼んだ。鎧糸の言うように、今の比企は、出会ったときの比企ではないかもしれない。それでも、私は、どんな比企でも好きでいると決めたのだ。比企が困っているなら助けたいのだ。
「ねぇ、食べていいの?」
「比企!だめです、比企!!」
「いいよ。比企の好きなようにしていいから」
乾いた血がついたパリパリ頬を撫でる。その瞬間、比企の大きな口がいきおいよく開かれて、鋭い牙が顔を出した。
「…っ、!」
「ごめん、ごめんね。君のことは食べないって言ったのに、僕、ごめ、ん、なさ、い」
「比企は約束守ってくれたんだから泣かなくていいんだよ。ありがとう、比企」
ボロボロと零れだした比企の涙をゆっくり拭ってやると、比企も優しい笑みで私の涙を拭った。ああ、比企の手はこんなにも優しいのに、どうして化け物扱いされなくてはいけないのだろうか。比企が全て悪いわけではないのに。助けたいのに、どうしようもなくなって私はさらに泣いてしまった。比企は、何も かもを諦めたかのように笑ったまま私の頭を撫でた。この檻の距離がどうしようもなくもどかしい。
130205/そこに存在する唯一