(やまなしおちなし)



「たぶん出会うたんが間違いやったんやわ」

「……」

「君のせいで僕は蛇になりそこねてしもうたんやから」

「そう、なんですか」

「君みたいなおかしな子になんて会わんかったら、人肌を知ることも情をもつこともなかったはずなんやけどなぁ、」


いつものひんやりとした手で私の頬に触れる市丸さんの声色はどこか泣きそうな子供のようだった。私はあなたに出会えてよかったと思ってるのに。喉まで出かかっているその言葉を彼に伝える方法を、私は知らない。

BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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