危機と不安と
「っ……はぁ、はぁ」
いつの間に眠ってしまったのだろう。レキは自室のベッドのあまりにもの寒さに目を覚ました。
身体をゾクゾクと悪寒が走っている。しかし頭は妙に熱くて、視線が定まらない。呼吸が浅いためか、息切れの様に短く吐き出される呼気も驚くほど熱を持っていた。
「う……」
寝返りを打つと、気持ち悪いくらいの浮遊感に襲われ、思わずベッドの端を掴んでしまう。
空を急降下したりで慣れているはずなのに、まるで底の無い暗闇に落ちてしまうような錯覚に身体が震えた。
「熱……あがった、のかな……」
眠っていた時間はわからないが、そんなに何時間も眠っていたはずがない。
この僅かな時間に、自分の身体には何が起きてしまったのだろう。
今までここまでの高熱に見舞われたことのないレキは、不安で胸がいっぱいになっていた。
「と、りあえず……お水、もらいに、いこ……」
ずるずるとベッドの端まで移動し、転げ落ちる様に床に足をつける。
ゆっくりと立ち上がろうとした時、突然の激しい振動にレキの身体はベッドに打ち付けられた。
ガァァンッッ!!
「っ?!な、にっ!?」
ベッドに倒れ込んだ為、あまり衝撃を受けなかった身体を腕を突っ張って起こし、耳を押さえる。
鼓膜が震える様な音はぐわんぐわんと頭の中を掻き回して、吐き気がした。
何とか風を起こし、身体をふわりと浮かせる。いつもは歩くことより数段楽なはずの風で翔ぶという行為は、鉛を足に巻かれているかのような疲労感を伴った。
ふらふらとドアまで翔び、廊下に身を乗り出す。
バタバタと慌ただしく行き交うクルー達の声から、レキは今の衝撃が攻撃だと知った。
「海軍ッ……っあ!」
続けざまに二度目の衝撃が走る。
レキはドアにしがみついて何とか耐えると、痛む身体を叱咤して甲板へ向けて飛び立っていた。