見えない気持ち
「ペンギンって、レキに何あげたのかな」
「さぁー」
ローの本棚と化している倉庫を片付けながら、ベポが言った言葉にシャチは曖昧に返事をした。
急に呼び出された理由はもの探しで、随分前に読んだ本を発掘しろとのことだった。
ローは恐ろしく本を溜め込み、ある程度はどこに置いてあるかを把握しているが、件の本はもういらないだろうと倉庫行きしていたものらしい。
ついでに片付けまで言い渡され、先程から二人でせっせと働いているところだった。
「ペンギンってレキが好きなのかな」
「?シャチは嫌いなの??」
「違う、そういう好き嫌いじゃない」
ベポの少しズレた返事にぴしゃりと言ったシャチは、目の前にある、本がぴっちりぎっしり詰まったダンボールの上に腰を下ろした。
まだまだある乱雑に本やら何やらが放り込まれているダンボールを見てため息をつくも、一息休憩とばかりに足を投げ出す。
ベポは床に座って、本を何故かドミノ倒しのように並べていた。
「だってさ。あいつ、レキに対しては異常に過保護だし、何て言うか、レキは特別って感じだろ」
「うーん、そうかなぁ。女の子だからじゃないの?」
それもあるのかもしれない。
ペンギンは基本的に自分なんかよりよっぽど女にモテるし、扱いだって上手い。
それでも自分に対してメリットの無い女に対しては結構冷たい時だってあるし、誰彼構わずといった風ではないのだ。
そんなペンギンは、レキに対しては本当に甘い。それこそ何かを勘ぐりたくなる程で、シャチは前々から少し疑問に思っていたのだった。
(でもレキは、船長が好きなんだよな)
クルー達の中で、その事実を知らないものは殆どいなかった。レキは隠しているつもりらしいが、ローの側にいるレキを見ていれば、気付かないはずがない。
見ているこっちが幸せになるような、そんな笑顔。
普段はあまり動じないくせに、驚くほど些細なことで頬を赤らめることもある。
そして、ふとした時にローを見つめている横顔。そして、呼ぶ声。
それをペンギンが知らないわけが無い。
知らないわけ、ないのだ。
「わっかんねー」
「俺はシャチの言ってることがわかんない」
「喋ってないで、手を動かせ」
頭を抱え込んだシャチとベポに、低く追いたてるような声が投げ掛けられる。
驚いて入り口を見れば、気だるそうに扉にもたれ掛かったローが視線を向けていた。
一向に作業が進んでいないような倉庫の現状に、ローの眉間がしかめられると、シャチは慌てて立ち上がった。
「さ、サボってません!」
「それをサボってるっていう--
ガァァンッッ!!!
激しい衝撃が船を襲った。
突然ローの言葉を遮って、鼓膜が揺れるような着弾音が響き渡り、身体が投げ出されるほどの揺れと衝撃が走る。
不安定に積まれていた本は雪崩れ込み、床に座っていたベポに襲いかかる。シャチもバランスを崩して転がり、壁に激突した。
「っなんだ!?」
『海軍!海軍です!!』
通信菅から叫ばれる声に、ローは倉庫を飛び出していた。